第379話 仙人の気持ち
儂は仙人をしている者じゃ。最近弟子ができて喜んでいたのじゃが、あまり懐かれていないようでの、少し寂しい気持ちもあるのじゃ。
それはそうとして、儂の弟子、規格外すぎるのじゃ。まずはその説明をせねばならんの。
まずは戦闘力、これについては見たことがないから正確なことは分からんが、それでも彼奴が放つオーラというか覇気は凄まじいものがある。正直、儂が全力を出してもかなり苦戦するじゃろう。まあ、流石に負けはせんがな。
そして次に恐ろしいのが機動力じゃな。儂の前から去る時もそうじゃが、あまりにも移動速度が速いのじゃ。儂の前からどこかへ行くスピードはまあ、かなり速い、くらいなのじゃが、以前気まぐれに弟子の気配を探している時にこやつはあり得んスピードで移動していたのじゃ。
それこそ、瞬間移動と言っても過言じゃないほどなのじゃ。儂も消えたかと思い、かなり焦ったものじゃ。流石にあのスピードでは儂も動けんの、それこそ転移魔法を覚えん限りきついじゃろうな。
そして、最後は感覚じゃ。これは最近になるまで気づいていなかったのじゃが、恐ろしいものがある。なんせ、世界の神秘を今から見つけようというものが、次の日には世界そのものを感じ取れるようになっていたのじゃ。
確かに、世界の神秘よりかは簡単な工程ではあるがそれでも何年もの修行の上でようやく感じ取れるようになるものなのじゃ。人間社会の中で生活している普通の人間であれば、感覚は麻痺しておりそれをほぐすのにも時間がかかるというのに、それをすんなり、しかも師匠を使わずに成し遂げたのだ。恐ろしい。
儂の弟子は今までの全ての仙人を超える逸材になる可能性があるのじゃ。
だからこそ儂も色々教えてやりたいんじゃが、最近の毛嫌いのされ方は露骨じゃからのう。次、来る時はどうなっていることやら。
もしかしたら、もう仙人になっているかも分からんわい。
まあ、冗談はこの辺にしておいて、世界の神秘を感じとるには、広がる感覚を一つに集中する必要があるのじゃ。じゃが、これは一般の人がやっても無理なように、感覚が狭いままではやっても無駄なのだ。だからこそ修行でその範囲を広げていくのじゃ。
そして、ここからがポイントじゃ。正直、ここまでは誰でも手順さえ守ればできるのじゃが、ここからは人を選ぶ工程に入る。
世界の神秘、世界の神秘がなぜ神秘と呼ばれるのか。それは、美しいからに他ならない。ということは、広い世界を見れるようになった感覚で、細かい世界を観察し、そこで美、というものを見つけねばならぬ。
しかし、ここが落とし穴でもあるのじゃ。なんせ人によって美しいと感じるものが違うからじゃ。あくまでも絶対的なる主観のもとにして、世界の神秘というものは存在する。つまり、ある人には世界の神秘でも別のある人にとってはそうじゃない、なんてことは多々あるのじゃ。
儂の弟子がそこをクリアできるのか、それが肝になるな。
しかも、これではまだ不十分なのじゃ。
世界の神秘を見て、美しいと感じる。これには続きがある。それは、感謝じゃ。感謝という感情はとても素晴らしいものなのじゃ。世界そのものに対してでも良いし、その巡り合わせに対してでもいい、自分の生にでも良いかもしれぬ。感謝をすることで、その世界の神秘のエネルギーが増大するのだ。
弟子よ、頑張るのじゃ。
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