第371話 手段と居場所
世界の神秘というものは実はどこにでもあるもので、人間はそれに気づいてないだけだ。ということを教わった。何気に師匠から物事を教わったのは初めてな気がするが、まあいいだろう。
それよりも俺もチャチャっと仙人になって師匠の元から独り立ちしたいんだよな。だからこそ、早いところ世界の神秘とやらを見つけなければならない。
饒舌な爺さんにはラストの麺を渡してお手洗いと言ってある。これで世界の神秘を発見できればもう会わないだろうし、もしどうしても見つけられなくてまた教えを請いに行くときは長いお手洗いってことにすればいいだけだからな。
完璧だ。
それより、世界の神秘だ。この世のどこにでもあるんだろ? そしてそれを感じ取ればいいんだろ? 俺たち人間が無意識に排除している情報を全て取り入れてそこから見出せばいいってことだな。
ん? そういえばなんかそういったスキルなかったか? 感覚を広げる的なやつ。
「あ、」
そうそうこれこれ、叡智啓蒙だ。これは選定の時に爺さんにしてもらったやつだな。これは意外と便利なスキルで、戦闘にも十分使えるやつだ。まあ、これを生み出すのにスキルを五つも使ったから当たり前っちゃ当たり前なのかもしれないが。このスキルの効果は、
【叡智啓蒙】‥全ての感覚から得られる情報を精査し、必要な情報のみを得ることができる。スキル発動時は体感時間が低下し、相手の動きを先読みし、弱点も判定する。また僅かな違和感や差異にも気づくことができる。
ということらしい。冒頭の、全ての感覚から得られる情報を精査し、ってあるな。これを活用すればいけそうだ。その後には必要な情報のみを得ることができるって書いてある。
つまり、俺がなるべく多くの情報をかき集めて、そこから世界の神秘を見出せばいいってことだ。うん、いけそうだな。
なるほど! だから仙人は修行するんだな! 山にこもって誰にも邪魔されない環境でただひたすら世界と向き合っているのか。なるほどなー、だから食べるのも忘れて常に空腹状態なんだな。
まあ、それとただ食いするのとは話は別だが。
よし、というわけで俺も集中できそうな場所に行きますか。流石に道の真ん中で瞑想しても気が散るし何より俺の羞恥心が暴走してしまう。それをするくらいなら、ブランコの上で瞑想した方がマシだな。
んー、いい場所がないな。NPCだけじゃなくてプレイヤーの目からも隠れた方がいいだろうからな。よし、面倒臭いからもう穴掘っちゃおう。俺って実は炭坑夫って称号持ってるくらいには穴堀り得意なんだし。
穴を掘る場所は適当に森でいいか。あまり手前すぎるとアレだしな。
モグーー!!
「……」
なんか穴ほってこっから瞑想しようと思った矢先、なんかモグラが来たんですけど。おい、土の中くらい静かにさせろよ。見たいな感情を込めて睨みつけると、
モグ?
と言って可愛いポーズを取りやがった。意外とモグラって可愛いんだな。不覚にも許してしまおうと思ったが、流石にこれでは集中できない。殺すのも違うからやむなく場所を変えたのだが、どこを掘ってもモグモグと出てきやがる。
というわけで、みんな大好き始まりの街まできた。なんとなく地下といったらあの湖が思い出されてしまった。ただそれだけの理由だ。ここならモンスターも弱いだろうし、安心して瞑想できるだろう。
では、おやすみなさい。
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