第357話 決着と結果
なんと、吹き飛ばされて倒れている状態のワニに対して、一つの大きな壁のようなタイヤになったムカデなワニに向かって、転がり始めたのだ!
最初はゆっくりとした動作であったが、次第にスピードをつけ始めて、ワニに対して突撃していった。ワニに衝突すると、ムカデはタイヤ形態を解除し、通常形態に戻ることで、ワニに覆いかぶさり、絡まって、ワニにトドメをさそうとしている。
これは流石に勝負あったと見えたが、その時、ワニが物凄い勢いで暴れ始めた。まさに死に物狂いで、という表現がぴったりだろう。巻き付かれているムカデに対して、振り解こうと体をジタバタさせるだけでなく、それを爪を立てて、ひっかき攻撃としても使っているのだ。
これはムカデも苦しそうである。絡み付けている力が弱くなっているように思えるし、引っ掻かれた部分からは毒々しい体液が出てしまっている。そして、拘束が弱まったワニは更に暴れるという、ムカデからかなりの悪循環に陥ってしまっていた。
内側だけとはいえ、ワニの暴れによって、かなりの範囲にダメージを負ってしまった。ムカデは一旦絡みつきを解除して、距離を取ろうとしている。しかし、ワニはここがチャンスだと言わんばかりに追いすがり追撃をしようとしている。
「おっ」
どうやらムカデは距離を取ろうとしたのではなかったようだ。その証拠にワニが追撃しようとした時に、尻尾で攻撃をした。つまり、尻尾が当たるように、尻尾の攻撃範囲内にワニを入れるために、自分が移動したのだ。なかなかやるじゃないか。
それからも一進一退の攻防が続いていく。自分が持っている武器を最大限に駆使して、相手の元へ攻撃をしている。
「ん? 誰か忘れてねーか?」
ワニもムカデも死力を尽くして、満身創痍になった時、俺はふと思い出してしまった。
「あ、カメ」
そういえばカメはどこにいったのだろうか。俺が気づく前に食べられてしまったのだろうか。今の今まですっかり忘れていたし、意識の外にいた。
蠱毒の間を隈なく見てみると、端の方にひっそりと佇んでいる甲羅があった。どうやらカメは手足を引っ込めて、高みの見物をしていたようだ。まあ、頭も引っ込んでいるから見えてはいないだろうが。
こいつ、もしや、と思ってワニとムカデの闘いを見てみると、もう満身創痍どころでは無くなっている。もはや瀕死だ。風が吹けば飛んでいきそうな、そんな雰囲気だ。
これはいいのだろうか。蠱毒として成り立っているのだろうか。途中までは完璧とも言える内容だったのだが、最後の最後に狂わされたな。まあ、強い毒ができればいいんだけども、これは……できるのか?
あの二人の戦いはどうやらムカデに軍配が上がったようだ。が、今は眠るように休んでいる。
「あ、」
するとそこへカメがよちよちと歩を進め始めた。ムカデの元にたどり着くと、カプッと噛みついて、毒を流している。
そこからどれくらいが経っただろうか。ムカデの命の灯火が消えた。
ーーー称号《蠱毒の観察者》を獲得しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます