第342話 悪魔的


 爺さんに深々とお礼を言った後、ゆっくり休んだ後に、再び婆さんのもとにやってきた。チャチャっと上級の料理人になりたいからな。そして、あのくそ師匠にゲテモノ料理を食わせてやるんだ!


 まあ、流石に可哀想だから殺しはしない。苦しむ程度に毒は盛るが。だって殺したら仙人になれないし、かといってゲテモノ料理でも普通に料理したら、美味しいって言われそうじゃん。それは嫌だからな。


 というわけで、今日も今日とて修行に励みますか!


「よろしくお願いしまーーーすっ!!」


「いひひひもう来ないかと思ったねぇ。じゃあ、これからは実戦的な料理に入っていくねぇ」


 実践的な料理かー、確かに今まではただスープを作ってただけだからな。まあ、それでも現実世界でもそこそこ通用するレベルには作れたと思うぞ?


 ん? 待てよ、現実世界って今いったよな? 俺って現実世界でも料理って上手くなってるのかな? それならばかなりラッキーじゃね?


 いや、でもステータスに頼っているからダメなのか? 俺って器用とかも普通に高くなってしまってるから、それを使って料理してたんなら無理だよな。ってことはこの努力は現実では活きないのか?


 で、でも、体に染み付いて無意識にできるようになったレベルだぞ? これならできないか?


 いや、感覚では分かってても体が追いつかないか、スポーツ選手が引退した後、みたいになって、教えることとかはできてもいざ実際にやれって言われたらきついのか? それでいうと筋力とかも関係してくるのか。


 あ、そういえば俺、嗅覚強化持ってたわ。料理において匂いってものすごく重要だろうし、味もほとんどが味覚じゃなくて嗅覚だったよな? ってことはもう絶望的だな。現実でも通用するって誰が言い出したんだよ。


 ステータスを封じることさえできたらなー。死んでも俺の場合は意味ないし、スキルは使えるまんまだからなー。


 ん? ステータスを封じる? ついでにスキルも? そんなスキル最近ゲットしたような……


「あっ!」


 悪魔の契約だ。悪魔の契約の効果は確か……


【悪魔との契約】‥戦闘中、悪魔をその身に宿すことで爆発的な力を得ることができる。ただしその代償として、スキル使用後は一週間、全スキル、称号が無効となり、ステータスも半減する。


 あ、きたじゃん。これを使えば俺はステータスを封じれる! 称号のおかげでステータスは成り立っているし、スキルも無効化だ! まさにこの為にあったと言っても過言じゃないな!


 こんなスキル、使うの怖いと思っていたが、いつかは使うのならば、今試運転するのも悪くない。


「すみません! すぐ戻ってきます!!」


 後ろからお婆さんの笑い声が聞こえてきた気がするが、気にしない。走りながらもう使ってしまう。一応誰の迷惑にもならないように、街の外に出て人気の少なそうな場所に移動した。


「【悪魔の契約】!!」


 どんなスキルなのだろう、少しの恐怖と圧倒的なワクワクが心に押し寄せてくる。


『ふははは! 久しぶりの人間の体だなぁ! あー、シャバの空気うんめぇー!! 最高だぜ!!』


 あ、これあれだ。ハーゲンと従魔武装した時みたいだ。しかも、だいぶ悪魔があれだな。うん、あれだ。


『この俺様を呼び出した奴はどこのどいつだ? 少しくらいは褒美を与えてあげてもいいなぁ。まあ、体は返さねぇけどなぁ! くはははは!』


 なるほど、悪魔は大抵人間の体を乗っ取るつもりで、呼び出してくれたお礼に少しだけいうことを聞いてくれる感じか。ということは恐らく死ぬまで体を乗っ取られるってことか? それくらい書いておけよー。まあ、死ぬのには慣れてるから良いんだけどな。よし、少し肩慣らしといくか。


『私に力をお貸しください』


 こういう悪魔に対しては下手にでて気持ちよくさせて、力を借りるだけ借りよう。


『くはははは! 良いぜぇ! 精々よく使いな!』


 お、力が漲ってくる感じがする。確かに強そうだ。でも、特にやることがないんだよな、適当にジャンプして走って、木を殴り倒して、目についたモンスター殴って、


『ありがとうございました!』


『な、もう良いのかよ? もっと悪魔的な力を使って、悪魔的なことしなくて良いのか?』


『あ、はい! 大丈夫です。短い時間でしたがありがとうございました。では、』


『大丈夫とは、変な奴もいるもんだな。では、とはどういうことだ? って何、おい! やめろ! 血迷うな! おい! おいーー!!』


「【貫通】」

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