第303話 ドラケ
よぉ、俺はドラケ、大剣使いだ。今日は待ちに待った頂上決定戦だな。このゲームの頂点を決めるイベントだ。俺は第六回のイベントで優勝をしたんだが、それまではそのイベントの存在も知らないくらいにこのゲームにはまり込んでいたんだ。
ガキの頃から喧嘩ばっかしてきた。そして俺はそれにいつも負け知らずだった。その頃の俺はこの世は力が強い奴が一番強いと思っていた。だが、違った。大人になるにつれて現実がどんどん見え始めて、気づいたら俺よりも遥かに弱い人間に頭を下げるようになっていた。
俺よりも力が弱いくせに俺に向かって高圧的な態度で椅子の上にふんぞりかえっていたアイツが俺は大っ嫌いだった。そして、あれだけ体を動かしていた俺が、体を動かせなくなったことで更にストレスが溜まり、その時の俺は軽くノイローゼみたくなっていたはずだ。
そして、そんな時見つけたのがこのゲームだ。自分のなりたい自分になれる! みたいなやっすい謳い文句につられた俺はこの世界に入って驚愕した。
ここでは力が全てなのだ。強ければモンスターを倒せるし、そうすればもっと強くなれる。そして更に倒して更に強くなる。
俺は最高の場所を見つけたと思った。これほど自分に適している場所はないとまで思った。俺の好きな喧嘩をしてるだけで強くなれるし、周りからも評価されていく。凄すぎんだろ。
そして俺はその時たまたま組んでた野良パーティーのメンバーからイベントのことを聞き、初めて参加した。そして、優勝した。
俺がこの世界で一番強い。俺はその時そう確信した。誰にも負ける気がしなかったし、現に誰にも負けなかった。
今回の頂上決定戦もまず間違いなく俺が優勝するだろう。俺の力は誰よりも高い。ほぼ全てのSPをSTRに注ぎ込み、筋肉増強など多くのパワー系のスキルもゲットしたこの俺が負けるはずないのだ。
お、とうとう俺も試合のようだ。さて、最初の被害者の面でも拝みにいきますか。
そしてそこにいたのは一人のヒョロヒョロの男だった。
最近は最前線に立つことも増えてきた俺でも見たことない顔だった。だが、ここに立っている以上いつかのイベントで優勝しているということだ。しかし、その体格差から、どう見ても俺が勝つことだけは分かった。
「よぉ、お兄さん。お兄さんはあまり見ねえ顔だよな。最前線にいるわけでもねえのに、イベントには優勝してここに立っている。どんなカラクリがあるか知らねーが、この俺と相棒の前では全て無意味ってことを教えてやるよ。漢は力が全てってことをよなぁ」
一撃で決める。あんな弱そうで覇気がないやつにそんな何振りも使う必要はない。一発で仕留める。そう心に決めた。
「3、2、1、」
始まった瞬間に飛び出し、斜め上から斬りかかり、一刀両断する。イメージは完璧だ。間違いなくこの勝負はもらったな。
「GO!!」
「おらぁああああ!!」
相手を睨み、少しだけ重い相棒と共に走り出す。コイツは本当に素晴らしい。これほどまでに力というものを具現化している武器はないだろう。俺もつい一目惚れをしてしまったしな。
ん? 相手の様子がおかしいぞ? 俺が走ってきているのに微動だにしていない。それに、なんか大っきくなってねーか? 流石に気のせいだよな?
まあ、どんな小手先の力使っても意味ないぜ。この俺様の強大な力の前ではどんな力や技も無意味だ!
そういって更に近づいていよいよ剣を振りかぶり斬りかかろうとした瞬間、
ん?
いや、これは気のせいじゃないぞ? 明らかに体が大きく、いや筋肉がゴツくなっていやがる。俺も現実ではかなり体を鍛えている方だとは思うが、鏡に映っていた自分よりかは遥かにゴツい。
ってか、それよりも戦闘中に体が大きくなるとかあるのか? おかしくないか? もしかして戦闘前の姿は俺を騙す為の偽物でこっちが本当の姿ってか?
おいおいおい、何ビビってんだこいつが元はどんな姿だったかなんて関係ねーだろ。俺がブッパなせばいいだけなんだからよ。俺の力とこの相棒さえいれば斬れないものなんてこの世界にあるわ
グシャッ
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