第187話 蟻さんの気持ち


「ふぅ。」


 結局、女王アリもハーゲンが倒しちゃったな。なーんか味気ないけどまあ、本人が満足そうだからいいか。


ーーー称号《蟻の天敵》を獲得しました。


《蟻の天敵》‥蟻に分類される生物を一定数以上倒す。スキル【蟻酸】を取得する。


【蟻酸】‥刺激臭のする、無色透明な毒液を口から射出する。毒性はそこまで強くは無いが、よく燃える。


 そして、この称号だよ、従魔の実績も俺に入るとはいえ、まさかの蟻酸を貰うなんて、しかも、口から出すってもう、完全なモンスターじゃないかよ。まあ、龍化した時になら、ギリ、使えそうではあるが、それにしても、このスキルはどう見ても人間が使う用では無いだろう。


 まあ、もう、もらったことに対してツベコベいうもんじゃ無いよな、どうしようもないんだし。それよりも、俺は気になる事がある、それは、武闘道液糖結晶、だ。非常に言いづらいが、そこは大して問題ではない。


 言いにくさよりも、これの効果が気になるのだ。蟻達はこれを摂取する事で、ラリっていたし、戦闘能力も向上していた。それを考慮すると、俺も、もしかしたら強くなれるかもしれない。


 それに、現実では、薬物中毒になって死んでる人も多くいる。ということは、これを摂取することで、俺も擬似的にクスリを体験して、死ぬことが出来るかもしれない。そんな、不謹慎だ、と思われるかもしれないが、ここはゲームだ、ゲームだからこそ、刃物も振り回せるし、物も奪えるし、死ぬことだって許されるのだ。そうじゃないなきゃ、俺もこんなにも死んでいない。


 ということはだ、ほぼ全てのこと、現実世界では許されざる、殺人行為、PKだって許されているんだから、たかが薬物がダメな訳ないだろう。まあ、もしかしたら、現実に影響があるかもしれないが、そこはゲームを信じる。ここはあくまでも、ゲームなんだ、だから許されるし、直接的に現実には影響はないはずだ。


 まあ、ここまで言い訳を並べてきたわけだが、単純に興味があるだけだ。現実では絶対にしないからこそ、興味が湧く、これはやるしかない。


 早速食ってみよう、まずは小さめに、


「んあまっ!!」


 そういえば、液糖結晶って名前に書いてあったな、そりゃ、甘いわけだ。ん、それにしても何も感じないぞ? やっぱ薬物はゲーム側で規制かかってるのか? いや、ここはゲームを信じて、量が少なかっただけだと信じよう。今度はもっと多めに、


 うん、やっぱり甘い、今度はかなりいったが、それでもまだまだ残っている。これで発動しなかったら、もう、全部食うか。


「ん?」


 お、なんか力が漲ってくる感じがする、漸く、効いてきたか?それにしても、あの量でこんだけしか効果無いのか、思ったより、しょぼいな、もっとバッキーンって決まるのかと思ってたぞ。


 でも、ステータスを見てみると、それぞれ全部上がってるな、これが、この薬の影響か。んー、でも死なないな、もっと量いった方が良かったか?


 ん? なんか喉が渇いてきたぞ、だが、それと同時にさっきとは比べものにならないくらいの力の漲り方、というか、高揚感、全能感が凄いこれは、今ならなんでも出来る気がするな。


 ステータスもさっきよりも、比にならないくらい、上がっている。これは、ヤバイな、あー、体を動かしたいな、さっきまで鬱陶しかった蟻軍団、今になって滅茶苦茶欲しくなってきたな、あれがあれば最高に気持ちいだろうな。


 あれ、高揚感とかが、終わってきたな、なんか疲れてきた、喉が物凄く渇いてきたし、頭も痛くなってきた、ヤバイ、視界も歪んできたし、体もふらつく…なんか遠くから、叫び声みたいなのも聞こえるし、段々寒気もしてきた、ああ、ヤバイ。


 そんだけヤバイのに、なんでそんなに冷静になっていられるのか、疑問に思った方、実はもう、並列思考、展開しています、本体の方の俺、絶賛ラリってます。側から見たら、相当ヤバイんだな。クスリなんか絶対やっちゃいけないし、やりたくないな。


 あ、ヤバイ、全身から汗が噴き出す様な感覚だ、脳が焼けてるのがよく分かる。もう、ほぼ意識ないし、とっくに倒れて、よだれを垂らしている。もう、ほんとに何してんだろ、実況中継してる俺が一番虚しいな。


 もう、なんか痙攣までしてるし、いよいよヤバイな。


 って、あ、死んだ。

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