第178話 塞翁と馬


 なんか気持ち悪かったし、なんか苛ついたから、俺の全力で抹殺してしまった。なんというか、魚と蛙の気持ち悪さが絶妙にコラボレーションしてたな。今後見つけ次第、ギロチンカッターおよび爆殺を確約しようと思う。


 それにしても、砂漠は広いな。こんな所に現実で放り出されたら、絶望だよな。オアシス見つけるのなんて運ゲーだしな。もしも見つけられなかったら、死あるのみだからな。


 それよりも、ボスはどこに居るんだ? さっきの雑魚キャラ同様、地中から湧いてくるのか? まあ、いいか、その内出てくるか。


 そんな感じで気楽に進んでいたんだが、どれだけ歩いても、一向にボスの姿が見える気配がない。韋駄天走を使って全速力で駆け巡って見たが、現れなかった。もしかして速すぎたのか? 速すぎて、向こうから現れる前に通り過ぎてしまった可能性もある。


 それか、ボスが隠れていて、プレイヤーがそこを通るだけでなく、しっかりと見つけなければ、存在を露わにしないとかか? だが気配感知でもそんなに反応がないしな。看破を使ってもいいが、隠れている所にピンポイントでしないと意味なさそうだしな。


 そうなってくると、どうしたもんかな。この無限に広がってそうなこの空間でボスと遭遇するのはかなり難しいだろ。それこそオアシスを見つけ出すようなものだろ。いや、隠れている分、こっちの方が見つけにくいか?


「はぁーあ」


 一旦、休憩しよう。行き詰まった時こそ、何も考えずにぼーっとした方が、道は開けるって誰かが言ってたような?


 そんなことを考えながら、だだっ広い砂漠のど真ん中で、立った状態から後ろ向きに倒れて、そのまま寝転ぼうとした。


 ブチャ


 何故か、背中から伝わってきた感触は、砂のサラサラした感触ではなくジメジメと湿っており、ネチャっとした気持ち悪い感触だった。


「ゲョオオオオオオオ!」


 静かな砂漠に似合わぬ、気持ち悪い鳴き声が響いたかと思えば、俺が寝転んでいた地面が急に盛り上がり、最終的には、俺は宙を舞っていた。


 出た、魚と蛙の悪い所を足して二で割った様なモンスター。しかも、さっきの雑魚キャラとは明らかに違う風貌と、存在感、気持ち悪さも1.5割増しだ。


 まあ、それはそうと、何故今更になって現れてきたのか。それはどう見ても、俺が地面に寝転がったからだろう。そして、たまたまそこにいたコイツにダイブしたこととなり、激情して、現れてきたと。


 恐らく、ずっと俺の後ろについてきてたんだろうな。確かにそこが一番安全かもしれないな、後ろを振り向かれたら、危ういかもだが、結果的に、俺は一度も振り向かなかったからな。


 コイツの作戦は良かったが、結局俺の運ゲーになってしまったな。まあ、可哀想って気持ちは微塵もないし、さっさと御退場してもらうか。


 厭離穢土はもう使ってしまったからな。今回は普通に倒すか。


〈Lv.114 デザートタッドポール〉


 うっ、名前をなんとなく見てみたんだが、名前も変だな。コイツがデザートってイカれてんだろ。もう精神衛生上よろしくないし、さっさと倒そう。


「【乾坤一擲】」


 俺の必殺技ともいえる、この一撃を決めて、次に行こうとしたら、なんとまだ、気持ち悪いその敵は立っていた。


 俺の会心の一撃を持ってしても、まるで効いている様子が一切無い。何事も無かったように、俺に向かって、ゲロを吐いてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る