第176話 お知らせ


 海の第六回層、とても綺麗だったけど、なんとも味気なく終わってしまった。まさか、倒したことのある敵に遭遇するとはな。でもこれで、ここのモンスターはこの世界のどこかにはいるってことが証明されたようなものだからな。ミノタウロスとも、また縁が有ればいつか会えるかもしれない。


 龍化状態でクラーケンを食べたのだが、相変わらず大きいよな。現実世界でこの量を食べたら、流石に死にそうだよな。


 ってか、食べすぎで人って死ねるのか? 胃が破裂したりするのか? なんだかんだ限界を突破しようとしないからな。本能的に、これ以上は食べないようセーブがかかるからな。でも、俺過食があるから死ねないのか、少し残念だな。


 クラーケンを倒した後は、適当に魚たちと戯れながら、魔法陣を探していた。何故か見つからないなと感じつつも、それでも探していると、


 ピコン


 急に通知音が鳴り響いた。海の中で、この機械音は一番と言っていい程、ありえなさそうなもんだが、それでも鳴った。不思議に思いつつも、何事かと思い、開いてみると、


「第一回頂上決定戦のお知らせ」


 と書いてあった。詳細を見てみると、なんでも、今まで第一回から第十回までのイベントの、優勝者だけを集めて戦わせるイベントらしい。


 これをする為に、優勝者は次のイベントに参加出来なかったのか、なるほどな。俺が優勝したのは確か、第三回だったからな。あと九人の優勝者と戦えるのか。これはめちゃくちゃアツイな。俺が帰らずの塔で修行している間に、たくさんプレイヤー同士で切磋琢磨してきたんだろう。そしてその結果、多くの猛者が現れたのか。


 俺は一体、プレイヤーの中ではどのくらいなんだろうな。そこそこ鍛えているとは思ってるが、まだまだなのだろうか。俺がずば抜けて強いってことは無いにしても、そこそこ強いってことはあるのだろうか。


 プレイヤーの中で、真のナンバーワンを決める戦いというわけか、アツイな。アツすぎる。これは実現可能かどうかはさておき、優勝を狙うしかないだろう。本気でやるぞ。


 えーっと、開催日時は、半年後か。タイムリミットはそこまでか。これはまた気合入れて頑張るしかねえな。それにしても、どんな敵が待ち受けているんだろうか、今からワクワクが止まらないぞ。


 半年までに、俺は仙人になれるかどうか、そして、どこまで強くなれるか。言い換えると、どこまで死ねるかが鍵になってくるよな……


 こうしちゃいられないな、早く塔のクリアをしないとな。小魚達と戯れている場合ではないな。早く次の階層に行かないと。


 そうして、ようやく魔法陣を見つけた俺が次に現れた場所は、砂漠だった。


「あっつい!」


 さっきまで海にいて、そこからの砂漠は、温度差が激しい上に、自分がビショ濡れだから一気に蒸れる。気持ち悪いし、必要なく体力を消耗してしまう。まあ、全然大丈夫なんだが、気持ちの問題だ。


 見渡す限り、砂漠が一面に広がっており、ボスどころかモンスターの影すら見えない。モンスターがいないなんてことはないだろうから、どこかしら、ってか砂の中しかないか。まあ、隠れているんだろうから、注意しながら進もう。


 気配感知を全力で張りながら進んでいると、突如、反応があった。警戒していたはずだが、一瞬、気が緩んだ時を狙われたようだ。


 モンスターは足元から出現し、俺の足を噛んできた。


「いった!! ……くない」


 どうしても癖で痛いと言ってしまうんだよな。犯人は、魚と蛙を足して二で割ったような、モンスターだ。素直に気持ち悪い。


 俺に物理攻撃無効の存在を教えてくれたことに感謝して、


「【厭離穢土】」

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