第175話 スキルとデジャブ


 磔刑者って、前にも似たようなのなんかあったよな。それに解剖者もだけど、全部自分なんだよなこれ。自分の体を治しまくて俺は医者ですって言ってるようなもんだろう? ダサいし、恥ずかしいぞ。


 聖槍は邪悪な存在に効くらしい。邪悪な存在と言えば、思い当たる節があるというか、思い当たる節しかないんだが。まあ、然るべきタイミングで活躍してくれることを祈ろう。


 欠損耐性はなんか今までの耐性スキルとは毛色が違うというか、なんか珍しい印象を受ける。だからと言って、別に何もないんだが。


 よし、もう、ここでやることはもうやり尽くしただろう。ミノタウロスも倒して、ある程度死ねたからな。ミノタウロス戦も含めればかなり死んだ事になるのか。


 この階層では、全体的に大きな収穫だったな。よし、この調子でどんどんクリアして行こう。


 次の階層に来た。魔法陣を探したのは俺だ、といいたいところだが、特殊なフィールドで、特殊なボスだったからか、ミノタウロスを倒した時点で出現していたのだ。だから、俺が見つけたのというのはあながち間違いでもないのだが。そして、その次の階層は……


 海だ。


 え、と思った方、正解だ。俺もそう思った。転移して速攻水没、とはならないが、今俺がいる場所が砂浜の海岸だ。どこまでも続く海岸線だ。やはり、ここの空間は不思議だよな。側から見たら絶対にありえない広さがここには収容されている訳だからな。東京ドーム何個分とかの次元ではないからな。


 それにしても、砂浜が広がっていて、目の前に海があるってことは、勿論、海の中に入って戦うってことだよな?


 俺は別に構わないんだが、潜水とかを持ってない。一般プレイヤーとかどうするんだろうか。ここに挑戦するような人達はみんな持ってるのか? それは無さそうだけど、こうも当たり前かの様に海があるからな、どうなんだろ?


 まあ、他人は他人、自分は自分だからな。気にしない気にしない。それよりもこれってもう、入っていいのか? なんか普通に海綺麗だし、そこら辺の南国の海と遜色いからな。


 よし、とりあえず入ってみるか。


 海へ入っていくと、


「うぁあ!」


 急に深くなっていたのだ。普通は徐々に深くなっていくもんだが、ここの海は違うらしい。勾配が、どんだけあるんだよってくらいある。さっきまで膝くらいだったのに、もう、胸の辺りにまで、水が来ている。


 これは、さっさと潜れってことか? まあ、ただただゆっくり着水してもなんの面白味もないからな。こっちの方がびっくりするが、面白かっただろう。


 それはそうと俺は水中に潜った。俺の水中適応のおかげで、水中は何も苦じゃなく、寧ろ楽しい。綺麗な生き物も見れるし、控えめに言って好きなんだよな。小さい頃から、水中はなんか落ち着く。


 それにしても、こんな優雅な場所にボスモンスターとか現れるのか? もう、なんなら寛いじゃってるぞ?


 そんなことを考えていると、急に当たりが暗くなって、周りにいた魚たちも何処かへ行ってしまった。俺がどこから来たのかも分からなくなるくらい、方向感覚が鈍っている。それだけ、真っ暗で、海流も強くかなり流されている。


 これは確実にボスキャラの登場シーンだろう。船で乗ってたら沈没する奴だな、うん。 


 そして、出てきたのが、


「あれ?」


 どっかで見たことあると思ったら、前倒したことのある、クラーケンだった。


 え、なんかミノタウロスの次だったから期待してたのに、なんか急に冷めたな。綺麗な海も台無しだし、さっさと終わらせて次いくか。


「【龍化】」


 それじゃ、タコパしますかね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る