第72話 ハク


 私はハク、盾使いをしている。興味本位でゲームを始めてみたのはいいものの、最初はモンスターが怖くてなにも出来ずにやられっぱなしだった。そこで思いついたのが防御力だった。VITに振りまくって、大きな盾を構えれば、モンスターなんぞ怖くはない。そうも思ったのだ。


 そうすることにして、そのようなビルドにし始めて、成果はすぐに現れることとなった。モンスターの攻撃を防げるし、もし仮に食らったとしても、全く痛くも痒くもない。まるで、自分が最強になったかの様に思えるほどだった。


 相手の攻撃を全く食らわないというだけでは勿論、勝てないが、こちらにダメージがないなら後はちくちく攻撃するだけでよい。そうすれば自分の防御力を超える相手以外には必ず勝てる。


 勝負する相手、つまりモンスターは今まで沢山攻略されているため、しっかりと下調べをしてから戦うことができる。そうやって確実に勝てる相手に勝ち続け、徐々に成長し、相手も強くしていくことで、いつのまにかトッププレイヤーと並ぶほどにまでに至った。


 そこで、ふと、第三回イベントのお知らせが目に入った。今までは出ても、どうせたいした結果は残せないと思って出ようとも思わなかったが、強くなった今ではもしかしたらと思い、思わず参加をしてしまった。


 今までの私なら、モンスターを倒して強くなっていくだけで満足していたのに……


 この参加がこれからの私のゲーム人生に影響を与えることになった。



 第三回イベントが始まった。まずは予選からだ。このルールでは最終的に残り三人までに生き残っていれば決勝トーナメントに出場できる。その為、私が思いついた作戦はただひたすらに守り続けるということだ。


 私自身に攻撃が一切入らなければ、後は他の人達同士で勝手に倒しあってくれるだろう。私のスキル、自動防御があれば私が反応できなくても守ってくれる。


 私はフィールドのほぼ中央からのスタートだった。予選はとにかく順調だった。近づかれて攻撃されても盾で防いでおけばダメージは入らないし、もし、相手の攻撃が強すぎて、ダメージが貫通しても、私には回復魔法もある。どう考えても負ける要素は無かった。


 例え、遠くから弓とかで狙撃されても自動防御が働いてくれる。この組み合わせは最強すぎる。


 そんな感じで予選は難なく突破したんだけど、一つ気になるのが、最後の方に現れた男だ。しつこく攻撃してこられて、最初の方は防げたんだけど、途中からスピードが上がってきて、自動防御も対応出来ずに何度か直接攻撃を入れられた。


 まあ、それも大した攻撃力じゃなかったから、そんなに大ダメージとはならなかったが、あの男か武器を持っていたり、もっと攻撃力が高かったりしていたらと考えると、少し怖い。


 まあ、取り敢えず予選は突破出来て、決勝トーナメントに進めた。このままどんどん勝ち上がろう。なんでも優勝者は景品がすごいらしい。まあ、あまり高望みせずに頑張ろう。


 ❇︎


 とうとう、決勝まで来てしまった。これまでの決勝トーナメントはひたすら守って守って、相手に隙が出来たタイミングで短剣で攻撃するという、モンスターと同じ方法で勝ち上がってきた。


 ただ、相手は予選の時に少し不安に感じた、あの男だ。それに今までの試合も恐らく見られていると思う。相手の装備はおかしいけど、準決勝に恐れていた事が起こってしまった。


 あの男が武器を持ったのだ。


 まずい。あの、攻撃速度で武器をもたれたら、この私と言えどもダメージを受ける。回復すれば良いが勿論、MPにも限界がある。相手からするとただ斬るだけだから消耗は少ない。


 それに相手のあの速度だとこちら側の攻撃も躱されてしまう。どうすればいいの。


 もう、奇襲で行くしかない。どうせ戦闘スタイルがバレているなら、最初から相手の虚をついて攻めるしか勝ち目はないだろう。


 よし、遂に始まる。どうせ負けるなら、後悔しないようにやる。相手も始まった瞬間に攻めてくるはずだから、それと同時に私も盾で突進する。シールドバッシュというスキルもあるから当たれば大ダメージになる。


 ただ、こちらから相手が見えないのが少し不安。でもやるしかない。


「3、2、1、」


よし、落ち着いて、私ならいける。


「GO!!」


よし、今! そうして思いっきり走り出した。VITに振りまくってるから遅いんだけど、相手が速いからどうにかなるは……


「……!!」


 なんで? こっちに突っ込んできてないの? もう当たってるはずなのに、なんで?


「はっ……!」


 回り、込まれてる……! やばい、私の盾は横にも広がってるからそれに相手は防がれてたけど、次はそうもいかない。


 これは厳しい。もう、どうしようもない。それに相手は剣を二本持っている。これはもう私の負け。どうせなら一矢報いて終わろう。


 そう思って攻撃してるんだけど、一度も当たらない。それどころか向こうの攻撃ばかり受けてしまっている。もう、ここまでかと思った時、




 目の前にスケルトンが現れた。




 そこからの記憶はない。


 私は少し自惚れていたのかもしれない。やっぱり、人間は凄い。モンスターと違って対応力もある。一筋縄ではいかない。


 でも、逆にそこが面白い、と思った。今回は負けてしまったけれど、いつかはあの男に勝てるようにこれからも頑張っていこう。


 私も人間なんだから、次は勝つ。





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