王冠花くじらの母娘
「ま、まさか…… 」
『結局、年老いて叶えきれなかったようですね。あの老王冠花くじらは』
「え? え? 」
『こんな形で再会するとは思いませんでした。辛いでしょうが、話してください。あなたに合ったことを……』
幸せを願った娘が、幸せになれずにここに来たのです。
まずは話を聞きたいと願いでました。
お姫さまはゆっくりと話します。
王子さまがお腹にいるとき、王子さまが病気で死んでしまうまでの間。
確かに王さまも王妃さまも自分を見てくれていた、と。
死んでしまってから、城中の人たちが自分を疎み始めたこと。
最後に、『あんたなんか私の子どもじゃない』と言われ、怪我をしても見向きもされなかったこと。
「わたしはいらない子だから、だから───いる子をあげたいのです。息子が望まれていたんです。娘ではなく」
5歳を迎えた幼いお姫さまとは思えない、しっかりとした物言いと願い。
それは、乳母やの愛情の賜物でした。
『……あの人は覚えていたのですね』
「お父さまと王妃さまに元気な王子をお願いします。わたしはお母さまの次の『王冠花くじら』になります」
願いを口にしたお姫さまは光の粒子に包まれ、小さな小さな『王冠花くじら』となりました。
『私も願いました。一緒にいつ来るか分からない次の来訪者を待ちましょう』
迎合を果たした母娘は、大小の『王冠花くじら』となり、人の前から見えなくなりました。
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