グルメライターの事件簿「中国茶をめぐる謎」
TOSHI
第1話 「小娘に味が分かるのか」といわれたら…&あらすじ
※本編は、あらすじの下から始まります 。
最初に グルメライターの事件簿「中国茶をめぐる謎」あらすじ
この小説は、二十三歳のグルメライター、沙奈が遭遇する事件を描くミステリーです。ちなみに筆者はグルメライターの女性ですけれど、この小説は、もちろんすべてがフィクションです。
主人公の御月沙奈(みつきさな)は、思わぬきっかけでグルメライターになった、二十三歳の女の子です。今、大学を卒業して一年目。賢くて案外、勝気な面もありますが、童顔のすなおな子です。
沙奈は確かな味覚と観察力、誠実さ、責任感を持っていますけれど、いわば「普通の女の子」でした。
神奈川県の端、比較的のどかなA市で生まれ育ち、東京の大学に進学。実家に住む沙奈は、通学にかかる時間も長く、家と学校を必死で往復する日々を送っていたのです。
ところが、学生時代に書いた、ブログの食レポが好評だったのがきっかけで、大きな会社の部長さんを紹介され、お金をもらって記事を書く、プロの「グルメライター」になりました。
SNS時代の今では、こういう人間がライターになれたのです。
ここまでは夢のような話だったのです。そして、彼女の食関係の記事は、どこの媒体で書かれても、定期的にヒットしました。
同時に、現実は甘くはありませんでした。童顔で若い女性の沙奈は、取材対象者から、なめられることもしばしば。また、ブロガーからライターになったため、同業者と知りあう機会も少なく、知らないこと、慣れないことがたくさんありました。
仕事に思いがけない重さを感じ、葛藤していた時、沙奈は事件にあいます。
「中国茶をめぐる謎」ともいうべき事件です。
この事件には、さまざまな人物が登場します。「日本史上初の女独裁者になる」と言った、という噂のある、やり手グルメライターの華乃さん。
暗い過去を持つという、謎めいた、日英ハーフ美人であり、横浜のセレブであり、紅茶に詳しい月代先生。
『自分は何かに巻き込まれようとしているのではないか?』……沙奈が正体の見えない不安に襲われだした時、中国から、これもまた、謎めいた絶世の美女、李先生が、豪華客船に乗って、横浜にやってきます。
李先生は、月代先生の中国茶の先生だ、ということでした。沙奈は日中ハーフの大学生・りんちゃん、彼女のお母さんである、日本に住んで長い中国人女性の劉さん達と、李先生を迎えます。
そして、本物の事件が起こります。
「中国茶をめぐる謎」、どんな謎なのか、どんな事件が起こるのか、どういう結末をむかえるのか。
あなたは、どう思いますか?
どうか、ご一読いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
※最初は一話、一話が短めですが、あとになるにしたがって、まとまって読みやすくなります。読んでね!
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グルメライターの事件簿「中国茶をめぐる謎」
第1話 「小娘に味が分かるのか」といわれたら…
私の名前は
『どうしてこんな小娘が来たんだ、お前に味が分かるのか? 何が分かるんだ?』
そんな時、私はまず、相手の目をぐっと見る。こういう念を込めて。
『私は自分の味覚を信じていますし、きっと、いえ絶対にお役に立てます』
言って分かりそうな人なら、口に出したこともあった。
そうでない場合は、相手を試す質問をすることもある。これは成功すると、むこうの顔色が変わって、流れも急に変わった取材もあった。
……でも、背伸びをしすぎてはいけない。自分に自信を持つのと、自分の分をわきまえないことは、別なのだ。
今の自分の分をわきまえた上で、今の自分の強みを信じるのが、本当の自信を持つということではないだろうか。それが他人の信用や、今後の自分の成長にもつながると思う。
私がいつも心掛けているのは、相手のいいところを探すこと。自分の店、自分が深く関わる店、自分の料理、仕事を本気で褒められて、気分が悪くなる人なんているのだろうか。
取材に協力してもらうには、心を開いてもらうのがきっと一番で、それには的確な誉め言葉が必須だと思う。
いい記事が書けて喜んでもらえた時は、こちらの苦労も報われるというか、実は凄く重い何かが、昇華してくれたような気分になる。
「グルメライター」――食に関する記事を書くライターの呼び方はいろいろあるが、時々恥ずかしくても、私はできるだけこの呼称を使うようにしている――の仕事を始めて四年以上になる。
この仕事を続けていったなら、いつか、この重さを感じなくなるのかな、でも何も感じなくなったら、それはそれで危険かな、と最近、葛藤するようになった。
ちょうどそんな時に、私はあの事件にあったのだ。中国茶をめぐる謎に……。
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