第68話 帰還


「金庫の遺品及び、機能停止中の警備ロボット全機回収完了しました!」

「よし撤収準備に入れ!」


 質屋の金庫にあった遺物及びショッピングモール内を警備していた警備ロボットを回収したミオン達はショッピングモールの駐車場に待機している車列に戻る。


「今回の件でこの遺跡もHランクに格下げだろうな」

「え? 何でですか?」


 回収作業を終えたターカーがショッピングモール跡の方に振り返り呟く。

 偶然呟きが聞こえていたミオンはなぜとターカーに聞き返す。


「あたいは雪豹ギルド職員じゃないから確約は出来ないけど……遺跡に稼働中の警備システムや警備ロボットの有無、今回の金庫のように未探査エリアが残っていることがGランク遺跡の条件じゃないかって言われてるんだよ」

「未探査だったら一緒に行った植物園跡の警備室も未探査だったのでは?」


 ターカーはGランク遺跡の条件を説明すると、ミオンはサスカッチと遭遇した植物園跡の警備室を口にする。


「警備システムやロボットはいなかったし、未探査エリアが警備室で大きなお宝もないからじゃねえか?」

「なるほど……」

「撤収準備完了しました!」


 ミオンとターカーがそんな話をしていると、ゴールデン・バッグの輸送隊が撤収準備を完了したと報告してくる。


「少しよろしいですか?」

「ひゃいっ!? なっ、なんでしょうか?」


 撤収準備を終えて帰還の号令をかけるだけという所で、ヤポンスキーがターカーに声をかけてくる。

 ターカーはヤポンスキーの姿を確認すると頬を染めて、上ずった声で返事をする。


「予想よりも回収品が多く、鑑定に時間取られそうなので、再度農業コロニーに寄ってほしいんです。無論滞在費などはこちらが持ちます。特にこのアメコミはじっくりと時間をかけて鑑定したくて」

「そういうことでしたらルートをコロニーに変更します」


 そういってヤポンスキーは紙媒体を劣化から護る特別な保存ケースに収納したアメコミを愛しそうに撫でながらコロニーに寄ってくれと提案する。

 ターカーは二つ返事で了承して、会話を聞いていたゴールデン・バッグの面々は再度ホテルのようなコロニーにもう一度寄れると聞いて歓声を上げている。


「ヤポンスキーさん、お仕事とか大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ。そういう時の為に幹部や重役たちがいますし、このまままっすぐ帰ったらアメコミを読む暇……ゴホン、回収品の鑑定やミオン君に説明する時間取れそうにないですから」


 ミオンはヴァルプルギス・ナイト・マーケットの会頭という立場のヤポンスキーが長時間仕事から離れていて大丈夫なのかと思ったが、ヤポンスキーは大丈夫だと答える。


 一瞬漏れたヤポンスキーの本音にはミオンは気づかなかった。

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