第32話 一方そのころ


「ターカー、今回は災難だったな」

「あたしがついておきながら……三人も新人を死なせて申し訳ありませんでした」


 ミオンがマッドサイエンティスト気質の医師からドリルについて熱く語られている時、ゴールデンパックのリーダー、ハイレディンはミオンと同じ病院に入院しているターカーを見舞っていた。


「子育て中のサスカッチが遺跡に住み着いていたんだ。ある意味運がなかった、仕方なかったさ」


 ターカーが申し訳なさそうに謝罪すると、ハイレディンは怒るわけでも慰めるわけでもなく、仕方なかったの一言で済ます。


「リーダー、リディとイザベラは?」

「カウンセリングを受けているが……まだ様子見だな。最悪雪堀か、チームの雑用に回すかだな」


 カーターが生き残ったリディとイザベラについて聞くと、ハイレディンはため息をついて二人の様子を語る。


「ターカー、お前から見てミオンはどうだった?」

「そうですねえ……最初は食い詰めて雪豹になった元孤児だと思ってました」


 ハイレディンが唐突にミオンについて質問するとターカーは第一印象を述べる。


「でも、仕事ぶりを見てたら一生懸命で真面目だし、リーダーから言われなくても面倒見てもいいかと思ってました」

「へえ」


 ターカーがミオンを遺跡潜りに誘ったのはリディの男嫌いを何とかするのが表の理由だったが、裏の理由としてハイレディンからミオンを誘うように言われていた。


「遺跡潜り中のミオンの様子は?」

「顔合わせでひと悶着あったんですが……達観しているというか、眼中にないというか……」


 ターカーは顔合わせでリディが騒いだこととその時のミオンの様子を報告する。


「わからないことは調べる、聞くができてる子なので伸びしろはあると思います。あと、あたしにはどの程度かわかりませんが、ハッキングと電子機器のスキルを持っています」


 ターカーはナビの存在を知らないので、警備室での出来事は全部ミオンがやったと思い込み、ハイレディンに報告する。


「ふむ……ハッキングスキルを持ってる雪豹は確保したいな……戦闘面は?」

「機転はきくほうだとおもいます。最初のサスカッチと戦った時、ミオンは施設の照明を利用してサスカッチを目くらましさせてサポートしてくれました」


 ハイレディンがミオンの戦闘面での能力を問うと、カーターは一匹目のサスカッチとの戦闘でミオンがどんなサポートしたか報告する。


「二匹目はあたしも負傷して最後まで確認したわけじゃないけど、ミオンがおとりになってサスカッチを引き付けていきました」

「ターカーから見て、ミオンは?」


 戦闘面でのミオンの評価をターカーから聞き出すと、ハイレディンは顎に手を当ててしばし病室内をうろうろするとターカーにミオンの評価を聞く。


「大樹に寄生して甘い汁を吸おうとする寄生虫どもとは違いますね。度胸もあり、スキルもあり、そして何より、あの子は持ってます」

「ターカーもそう思ったか」


 持っている、その一言を聞いてハイレディンはにやりと笑う。


「あと、個人的に好みの子ですね。匂い的にまだっぽいし」

「そういえばターカー……年下の童貞好きだったね」


 ターカーが獲物を見つけた肉食獣のような笑みを浮かべるとハイレディンは思い出したようにターカーの趣味を口にした。

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