第7話 ギルドショップ


 装備の充実を図ることにしたミオンはギルドにUターンし、ギルド直営の店へと向かう。


『ギルド内にショップがあるのですね』

「壁の向こうにいけばプラント品があるけど、まず買えないし、入れない」


 都市は壁ごとに市民ランクを設けており、用事もなく上位の市民エリアに足を踏み入れた場合、運が悪いと警告なしの射殺が待っている。


 雪豹ギルドは元は警察署か何かだった建物を再利用した施設で、地下にギルド直営の雪豹装備の販売店がある。


 他にも個人経営のガンズショップなどがあるがミオンには銃など装備の良しあしが分からず、雪豹になった孤児院の先輩(現在行方不明)から善し悪しが分かるまではギルドショップで購入しろと言われていた。


『プラント品とは?』

「聞きかじりだけど、武器製造用のプラントで製造された新品で都市軍の標準装備だったりするらしいよ。たまに型落ち品などが払い下げで外に広がる時あるけど……いつか買えたらいいな」


 ナビィがプラント品についてミオンに質問するとうろ覚えの情報をナビに伝える。


「色々あるな」

「いらっしゃい。ギルドカードの提示してくれるか?」


 ギルドショップは銃器などの備品を置くエリアを再利用しており、鉄格子の向こうに銃などが飾られている。

 ミオンが足を踏み入れると、格子越しにスキンヘッドの店員が声をかけてくる。


「これでいいですか?」

「おっと、まだ新人か。悪いけど規則で君に売れるのはここまでだ」


 ミオンが店員にカードを手渡すと、カードのランクを確認した店員が販売できる商品のカタログを見せてくる。


 雪豹ライセンスにはH~AAAまでの十段階のランクがあり、都市にどれだけ貢献したかによってランクが上がっていくシステムになっている。


 登録してまだ二日目のミオンはH、通称ルーキーと呼ばれるランクだった。



「うーん、何がいいかな?」

『マスター、まずはこちらの防寒具を購入することを強く推奨します』


 ナビィが薦めてくる防寒具はARゴーグルなど電子機器が搭載されているタイプだった。


「いっ!? これを買えと?」

『はいっ!』


 ミオンはナビィが薦めてきた防寒具の値段を見て悲鳴を上げそうになる。

 購入すると、今日の儲けのほとんどが消えてしまう。

 そこから金額にもよるが武器とか購入すれば、また明日の食費にも困る生活に戻る。


「ほう、人工知能付きのPDAか、珍しいもの持ってるな。だが、それならこいつはお買い得品だ」

「そうなんですか?」


 ミオンとナビィの会話を見ていた店員が声をかけ、ナビが薦めた防寒具の購入を店員も勧めてくる。


「う~~~……かっ、買います」

「毎度あり、サイズ調整するからこっち来な。今着てる奴はどうする? 下取りに出すか?」

「えっと……下取りで」

「あいよ」


 ミオンは断腸の思いで買いますと声を絞り出す。

 店員はゲートを開けて手招きし、商品を取り出す。


「違和感はないか?」

「若干前のより、マスクが重たく感じます……」

「そいつは我慢しろ、電子機器を入れてるからな。他に買うものあるか」


 着替えが終わってゲートから出てくるミオン。

 店員は所定の位置に戻ると他に買う物がないか聞いてくる。


「ええっと、正規のスコップと銃を、この予算で」

「この予算なら、こいつだな。ウルフジュニア、お前みたいな子供でも持てるようにダブルカーラムマガジンを排してグリップを小型化し、握りやすくたハンドガンだ」


 カウンターの下から小ぶりな9mmハンドガンを取り出すと、ゴトリと音をたててカウンターに置く。


「今なら……2マガジンの試射もつけてこの値段だ」

「………かい……ますっ!」


 ミオンは提示された値段を見て悩みに悩んで購入を決めた。


「ふふ、武器や防具をケチらないのはいい雪豹の条件の一つだ。ビックになってもっと金落としに来てくれよ」


 店員はにやりと笑ってミオンにそう告げた。

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