579.【後日談6】大魔導士様 その14
□前書き□
後半少しグロ注意。
□□□□□□□□□□□
・ケンイチ(猫)視点
風呂屋から追い出されたので、宿屋に戻ることにした。
ヨツバ達は居ないらしい。
自分の部屋に入り、ベッドの上で前足を折りたたんで香箱座りしながらいじけていると、ヒギーが話しかけてきた。
「ケンイチ、随分と取り乱していたな」
「ニャワ(取り乱す? 俺が?)」
「先ほどの問答を聞けば一目瞭然だ。
ヨツバ達の蘇生に関して、先を越されて悔しかったのか?
ヨツバ達の記憶が無くなっていた事に、怒りを覚えたのか?
何にせよ君は、しなくても良い挑発を働いたわけだ」
「ニャワワ(ヒギー。確かに俺は少し怒りに任せた発言をしたかもしれない。
だけど、さっき肉球魔王に言った発言内容を撤回するつもりはないぞ)」
「命の扱い、というテーマは非常に道徳的だ。科学的な正解は無い。
各々が答えを持ち、各々がそれが正しいと信じている。
ケンイチ、君の考えから見れば肉球魔王のした事は間違っているのだろう。
だが、肉球魔王から見ればケンイチ、君の考えこそが間違っていると言える。
しかし何度も言うように科学的には正解など無い。
だからどちらが正しいとか、どちらが間違ってるとか言うのは、非常に不毛な論争だ」
「ニャワ(各々がそれが正しいと信じている、か……)」
「何にせよ君はしばらく頭を冷やすべきだ。
ことわざにもあるだろう。言いたい事は明日言え、と」
そうだな。
俺は少し焦っていた。
このメンタルで娼館に行っても、心の底から楽しめないだろう。
今日はさっさと寝るとしよう。
目を瞑ると、さっき風呂に行った影響もあってか、すーっと意識を手放すことが出来た。
……。
…………。
「ケンイチ。ケンイチ。……寝たな、よし。
首輪型魔道具を借りるぞ」
◇ ◇ ◇ ◇
・トミタ(猫)視点
岩盤浴を終え、雑貨屋クローバーへ戻ると、レジカウンターの上におぞましい生物が居た。
30cmくらいの巨大なダニ。ただし頭に肉球付きの手がくっついている。
ダニの首には首輪型魔道具が装着されていた。
「にゃー(お前はケンイチ君の)」
「初めまして。私はヒギーを名乗っている」
肉球付きの手から目が出てきて、喋りだした。
音声は、内側の小さな骨を震わせ、その音を増幅して出しているらしい。
「にゃー(初めまして。それ、どうなってるんだ?
ははぁ、ヒギー君もケンイチ君のスキルが使えるのか。
ダニを操って、そこに寄生して活動のための栄養分を補っている感じか)」
「初見で【鑑定】を使わずにそこまで分かるものなのか」
「にゃー(ここだけの話、【鑑定】は使わないで良いなら使わないに越したことは無いぞ)」
【鑑定】を通じてパソコンのウイルスみたいな事してくる、ソフみたいな奴が居るからな。
「にゃー(それで、俺に何か用?)」
「あぁ。ゴーレムとホムンクルスが欲しい。
単なる好奇心によるものだ。
実験に使ったりバラしたりする目的で使う。
購入は可能だろうか?」
「にゃー(ゴーレムならこのくらいの値段で販売している。
ホムンクルスはなー、命君に相談しなきゃ手に入らない……そうだ、中庭のダンジョンに潜れば特殊なホムンクルスが手に入るぞ)」
「ダンジョンか。さすがにケンイチに内緒で話を進めるのは出来なそうだ。
中庭のダンジョンの場所はおおよそ知っているが、中に入るための手続きと必要な物を教えて欲しい」
ヒギー君は10体ほどゴーレムを購入し四次元空間に入れた。
そして中庭のダンジョンに入るための手続き費用を払った後、嬉しそうに店を出ていった。
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