554.【後日談5】肉球魔王様に挑め その3


俺は3種類の錬金魔獣を四次元空間から取り出す。


人間大のマグロ型機械にタイヤが4つ付いた、マグロ戦車チャリオット

人間2人分の高さのカマス型機械に足と手と角が付いた、カマスデーモン

人間の腕くらいのサケ機械に羽が付いた、サケ大助おおすけ



「にゃー(この大会では、これら錬金魔獣を狩ってもらう。

それぞれの錬金魔獣の弱点部位にはランプが点灯している。

そこに攻撃を当てれば、ランプが消失しポイントが入る)」



俺は試しに、マグロ戦車の頭に飛びつき、猫パンチする。


ピコンと音が鳴り、マグロ戦車の頭の3つのランプのうち1つが消灯した。



「にゃー(弱点のランプを全て消灯すれば、その部位は破壊される。

そして頭のランプを全て消灯すれば、その錬金魔獣は機能停止し、とどめを刺した者に追加で5ポイントが入る。

200ポイントを超えた者から離脱となり場外へ転送され、明日の挑戦権を得る)」



マグロ戦車のタイヤの側面から水鉄砲が飛び出し、俺に水を射出する。

俺は水にぬれる。

すると、俺の頭に体力2/3とAR映像が表示される。



「にゃー(錬金魔獣の攻撃を受けると、体力と書かれた数値が減少する。

錬金魔獣の攻撃には攻撃力が無いが、体力が0になった者は、失格となり、場外へ転送される。

なるべく攻撃をかわすように)」



俺はステップを踏んで水鉄砲をかわし、マグロ戦車の頭に飛び蹴りを食らわせる。

さらに体を捻って、回し蹴り。


マグロ戦車の頭の3つのランプが全て消灯し、シュウウウウンという音とともにマグロ戦車は動かなくなった。



「にゃー(大会は午前の部、午後の部に分かれる。

午前の部で見事挑戦権を獲得した者は、午後の部は見学だな。

惜しくも午前の部で失格した者も、午後の部へ参加可能だ。

午後の部は、体力表記は全快した状態で開始する。

ポイントは持ち越しなので、なるべく失格しないようにな)」



動かなくなったマグロ戦車を、四次元空間に収納する。



「にゃー(機能停止した錬金魔獣は即座に運営が回収するので、触らないように。

あとは他者への妨害行為だが、許可する。

ただし、錬金魔獣は妨害行為に対して厳しいので、基本的にはおすすめしない)」



俺は地面をポフポフと撫でる。

【変性錬成】で、円を描くような形で、直径15km、高さ100mの石壁を作った。



「にゃー(以上だ。それでは10分後に大会、午前の部を開始する。

錬金魔獣は、この一帯の壁の内部にランダムで沸くので、壁の外に行っても無駄だぞ。

以上が大会の説明だ)」



橘若菜が、はいカット、と撮影を終えて、俺の大会説明の役目が終わった。


さて、あとの細かい案内は橘若菜に任せるとして、俺は宿屋でのんびりさせてもらうとしよう。


俺は四次元ワープで、宿屋の管理人室に向かった。



◇ ◇ ◇ ◇



宿屋の管理人室には、タンスの上で体を伸ばして昼寝中のサバさんが居た。

俺がタンスに飛び乗り近づいても、起きない。どうやら深く眠っているようだ。



「起こしちゃ駄目よ猫さん、降りてらっしゃい」



管理人室に入ってきたナンシーさんに注意された。

仕事が一段落して、休憩を取るようだ。


俺が床にストンと着地すると、ナンシーさんに抱っこされ、管理人室を出る。


今日の宿屋は、お客さんがいつもより多い。

部屋は満員になっているらしい。


ナンシーさんは、食堂に俺を連れて来て、降ろした。



「じゃあね猫さん」



そして食堂を出ていく。

多分、管理人室に戻って、仮眠を取るのだろう。


食堂の奥ではネルがお客さん向けに料理を作っている。

それをヨツバが運んでいる。



「お待たせしました、シャケパスタです」


「何だ? この紙は?」



たまにヨツバが、『よかったら後で会いませんか』という紙を、若い男性に渡している。

ナンパかな?



「シッシッ、俺は軽い女には興味無い」


「チッ」



舌打ちしたのはヨツバだ。

接客業で態度悪くするのはやめろ。


料理を運び終わったヨツバが、俺の方を向く。



「おや、猫さんじゃないですか」


「にゃー(接客なら、ホムンクルスに任せればいいと思うが)」


「分かってないですね。色んな国、色んな都市から沢山の魔獣、人が来ているんですよ。

つまりチャンスです。色んなイケメンがやってきますよ」



だから何なんだ。

ヨツバは昼食にやって来た男性客を見て、スーパーハンサムターイムとか独り言を言っているが、ちょっと意味が分からない。



『さぁ、それでは参加者の皆様、スタートッッ!』



食堂に置いてある、テレビ型(ブラウン管サイズ)の映像音声配信魔道具から、大会開始の合図が出された。


ちょうどそこに居た紫色のネコ科魔獣の1匹が、映像音声配信魔道具の上に飛び乗る。

そして前足をダランと伸ばし、まったりする。



「なぅなぅ(あったけー)」


「おい、前足を退けろ! 画面が見えないだろ!」



お客さんの文句が聞こえるが、紫ネコ科魔獣は無視して昼寝を始めたのだった。



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