552.【後日談5】肉球魔王様に挑め その1


夜。中央広場にて。



「んなー(これは予想外ですな……)」



人間大の大きさで茶トラ白の毛皮を持つネコ科魔獣幹部、火車かしゃが、心を落ち着かせるために前足を毛づくろいしていた。


火車の心を乱したのは、魔獣幹部達に配られた1枚の資料の紙。



「うんみゅう(1年に1度行われる、魔獣幹部への挑戦。それはネコ科魔獣限定で行われる。

一方、肉球魔王様への挑戦は、ネコ科魔獣以外でも、誰でも参加可能。

だけどこの数は驚き)」



楕円形の金貨を抱いている、金色のトラ柄な普通猫サイズのネコ科魔獣幹部、金の亡者が言う。


資料には、今年の俺への挑戦者の数が書かれているのだが、その数が例年の1000倍以上となっていた。

魔獣幹部への挑戦数も増えてはいるが、せいぜい3倍程度だ。



「肉球魔王様への挑戦の様子を、大鍋商会が世界に向けて映像音声配信魔道具で実況解説配信するそうだねぇ。

その事前告知の影響で、肉球魔王様への挑戦自体の認知度が上がったわけだねぇ」



そう解析するのは、黒と茶色のまだらのサビ模様の普通猫サイズのネコ科魔獣幹部、化け猫。



「ガォオオ(じゃあ今年は、例年通りの1対1をやめて、まとめて相手すればいいんじゃね?)」



翼の生えたサバ白の毛皮の巨大ネコ科魔獣幹部、キメラが言う。



「アァー……大……会……形……式」



薄皮薄毛の緑色のネコ科魔獣幹部、ゾンビキャットが言う。



「にゃー(いっぺんに相手するにしても、数が数だからなぁ。

ゾンビキャットが提唱する大会形式にして、上位数十名ほどを相手にすることにしよう)」


「んなうー(大会の形式はどうするのですかな?)」


「にゃー(予選は今話題の、大鍋商会のハンティングセンター形式にしよう。

ある程度の広さのフィールドに錬金魔獣を解き放ち、錬金魔獣を狩った者がポイントを得る。

目標ポイントを設定し、目標ポイントを超えた者から離脱、挑戦権を得る形にする。

挑戦権を得た者が一定数に達したら、あるいは指定の時間がきたらそこで終了。

あとは挑戦権を持っている者を俺が1対1で相手する)」


「うみゅう(これは良い見世物になる。大鍋商会に負けられない。

錬金術工房もお金儲けしなきゃ)」


「ガォー(じゃあ具体的なルールを決めようぜ!

妨害は許可する? 失格条件は? 複数の者が1体の錬金魔獣を狩った場合のポイント配分は?)」


「そうだねぇ……」



こうして俺達は、俺への挑戦権をかけた大会のルールを話し合うことにした。



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