537.【後日談5】異世界転移! 魔獣都市マタタビ その8



・転移者 橘若菜視点



朝日で目が覚める。

今日も良い天気。


頭から葉っぱの生えた白猫、若ニャンは隣で腹を天井に向けて寝ていた。


ベッドから出て、服を着替えて部屋を出て、朝日をもっと浴びるために外に出る。

適度な日光は、セロトニンを体から分泌させ、体に良いのだそうだ。

よく知らないけど。


外に出ると、奇妙な光景が目に入る。


ざぶざぶ、わしゃわしゃ。


あちこちの家の前で、たらいの中に水が張られており、その中で猫が洗われている。


『魔獣お風呂大作戦』

月に1度、猫が綺麗に水洗いされる日らしい。


私の家の前にも、猫洗いのためのたらいと、水(というか人肌くらいのぬるま湯)が入ったたると、シャンプー、タオルが置いてある。

これは自由に使って良いらしい。


家に入り、自室に戻り、若ニャンを抱きかかえて、外に出る。


そして、若ニャンにぬるま湯をぶっかける。



「にゃああああん(のーう)」


「おはよー」


「にゃあああああん(わーん、出荷されるー)」


「出荷って何さ」



農家で収穫されたダイコンじゃあるまいし。


しゃかしゃか。

シャンプーを体に付けて、泡立てる。


ばしゃー。若ニャンを洗い流した。


ごしごし。タオルで綺麗に拭いてあげた。



「にゃああん(ぐすん……これから朝市あさいちに並べられるー)」


「出荷しないってば」



若ニャンを抱っこし家に戻り、自室に入る。


朝食を四次元空間から取り出す。


昨日配給所で貰った、レトルトの鶏肉サラダだ。

温めずに、そのまま食べられるので便利。

パックから出し、皿に盛り、モグモグと食べた。


若ニャンには水を皿に入れてあげた。

皿を持ち上げてぐびぐび飲んでいる。

私の知ってる猫の飲み方と違う。



◇ ◇ ◇ ◇



食事を終えて、これからの予定を考える。


昨日はロキサス様の神託と食料確保、雑貨屋クローバーでの買い物だけで1日が終わってしまった。


今日は仕事探ししよう。

せっかく錬金術スキル貰ったのだから、それを有効活用できる仕事が良い。


ちょうど錬金術工房という所があるみたいだし、そこに弟子入りしようかな。


というわけで、若ニャンには留守番をしてもらい、家を出て、首輪型魔道具の道案内に従い、錬金術工房を目指す。



◇ ◇ ◇ ◇



錬金術工房、工房長室にて。



「筆記0点、実技25点なので不採用です」



がーん。


錬金術工房の面接で言い渡された結果は不採用。


筆記試験は、スキルの使用禁止ということで、全く分からなかった。

【鑑定】が使えたら良かったのだけど。


実技試験も、初めての錬金術スキル使用ということで、かなり悪戦苦闘した。

というか錬金術スキルは、鍋にぶっこんで錬金するアト〇エ式じゃなくて、手をかざして材料から直接作り出すハガ〇ン式だった。

ダニエル電池を作ったのだけど、あまり受けなかったみたい。



「肉球魔王様のお気に入り人物ということで期待していましたが、どうやら期待外れだったようです」


「おうふ」



錬金術の神様に貰ったチートスキルを使いこなせなかった。

これは恥ずかしい。



「今回は安全な材料で実技試験を行いましたが、本来は魔石を用いた魔道具作成が主となります。

魔石は、扱いを間違えたら大爆発する危険な物です。

あなたは錬金術師として半人前以下なので、くれぐれも、一人で勝手に取り扱わないでくださいね」


「了解」



うーん、散々な結果だった。

ぶっつけ本番では厳しかったようだ。


私は錬金術工房を出た。

これは修行が必要かもしれない。

あと、勉強も必要だ。


ちなみに錬金術工房の皆さまは高給取りで、家庭教師してもらう場合は1日50万マタタビ必要らしい。

お金が足りない。


しばらくは首輪型魔道具で無料で見ることの出来る、錬金術のビデオ講義を見て、勉強することにしよう。


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