528.【後日談5】ネコ科魔獣ではない


お昼の宿屋管理人室にて。


俺は、ヨツバが腹筋するのを横目に、オヤツのササミチップスを食べていた。

うーん、鶏肉の香りがたまらん。



「……猫さん、私が何をしているか知ってますか?」


「にゃー(腹筋だろ?)」


「ダイエットですよ! 私がオヤツ食べられないってのに、嫌がらせですか!」



ヨツバは最近、体重が増えたとか言って運動量を増やしているのだ。

だが俺から見れば、全然なのだが。


俺は常々思うのだが、女子の理想体重って極端過ぎる気がするな。

BMI(体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が20切ってても太いとか言う奴は、ダイエットし過ぎて餓死したモデルの話とか知らないんだろうな。

この世界ではそれほど極端なダイエットしてる奴は見かけないが。



「にゃー(お腹が空いているんなら、タオルでもカミカミすればいいと思うぞ)」


「なるほど……って、私はネコ科魔獣じゃないですよ!」



ヨツバがイライラしているのは、炭水化物が足りていないからだろうか。

低血糖になっているのかな。


もぐもぐ。ササミチップスうめぇ。



◇ ◇ ◇ ◇



夜。中央広場にて。


今日は、ネコ科魔獣以外のとある魔獣を、ネコ科魔獣と同等の扱いにするかどうかについての議論だ。



「んなー(エントリーナンバー1番。ニャンドラゴラ)」



人間大の茶トラ白のネコ科魔獣幹部、火車が、目の前にある鉢植えの草を引っこ抜く。



「にゃあああああん(あいむ、はんぐりー)」



同情を誘うような、甘ったるい声で鳴く植物魔獣。

草の根にあたる部分が、まるで猫のような形をしている。そしてこの鳴き声。


人間が近くでこの声を聞いたら、胸がキュンとなって気絶してしまうらしい。

そしてそのままニャンドラゴラのごはんになってしまうのだとか。


ニャンドラゴラにササミチップスを渡す。

美味そうに食べる。彼らは雑食だ。

その点でも俺達とだいぶ生態が違う。



「ガゥ(こいつらネコ科魔獣や人間と仲良く出来るの?)」



コンテナ大で翼の生えたサバ白のネコ科魔獣幹部、キメラが疑問を投げる。



「腹が膨れていれば、襲わないと思うねぇ。ま、教育は必要だろうけどねぇ」



黒と茶色のまだらのサビ模様の普通猫サイズのネコ科魔獣幹部、化け猫が人間語で答える。



「アァー……多……数……決」



二足歩行の緑色なネコ科魔獣幹部、ゾンビキャットが言う。



「うみゅう(ではニャンドラゴラをネコ科魔獣と同等の処遇にする件、賛成の魔獣幹部は手を挙げて)」



小判の形をした金貨を抱いている、金色のトラ柄な普通猫サイズのネコ科魔獣、金の亡者が言う。


前足を挙げた魔獣幹部は、火車と化け猫。

つまり反対3賛成2。



「んなう(反対多数により否決ですな)」


「にゃあああああん(がーん)」


「問題点は、やっぱりこの鳴き声だねぇ」


「ガォ(ちょっと危ないよなぁ。人間の高齢者が鳴き声を聞いて、転倒したら大変だし)」


「うんみゅ(都市に招き入れるなら、鳴き声対策の魔道具を都市のあちこちに設置必要。経費がかかる)」



ニャンドラゴラはしょんぼりして、鉢植えに戻って、潜った。



「にゃー(逆に、ニャンドラゴラに鳴き声対策用の魔道具を装着させるのはどうだ?)」


「んな(……なるほど! さすがは肉球魔王様ですぞ!)」


「うみゅう(それなら低コストで済む。問題解決。もう一度採決を取る。賛成者は挙手)」



結果は賛成5。

可決された。


こうしてニャンドラゴラは条件付きで、魔獣都市マタタビのネコ科魔獣と同等の扱いとなった。

つまり、人間の奴隷も所有出来るし、毎日タダ飯が食べられるようになった。


のちに、昼寝中のニャンドラゴラの葉が、ネコ科魔獣によってムシャムシャ食べられるといういじめが発生するが、それはまた別の話。


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