502.【後日談4】ボトルキャット その2


・錬金術師ヴィクター視点



中庭ダンジョン10F、イベント広場にて。

俺の小型ホムンクルス、通称ホムロットの1体が一斉射撃を放ち、燃え盛る石に包まれた魔獣の竜を沈めた。



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イベントボス『溶岩竜 ヴォルケニオロチ』討伐達成!

以下のアイテムをプレゼントボックスに贈りました。

アイテム:般ニャの面

ヴォルケニック鱗x11

外装『ヴォルケニオロチ』

105マタタビ

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「よし、やった」



外装『ヴォルケニオロチ』は、ホムンペットの見た目を変更出来る(性能は変わらない)イベント限定外装だ。

ドロップ率0.1%の激レアアイテムだから、あの廃人どもに高値で売れるだろう。


……ん?

チャットが光ってるな。


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『錬金術工房』グループチャット


リリー:「ヴォルケニオロチの死骸はおいらが引き取るにゃ~」

金の亡者:「錬金術工房の皆に連絡。

明日から1週間、とある問題の調査のために、錬金術工房から中央都市チザンへ調査団を派遣することになった。

該当する調査団の5人を公平にあみだくじで選出したから、明日から行ってきて。

選出→ハムスト、オブリック、バイセプス・ブラキ、バイセプス・フェモラリス、ヴィクター」


カルロ:「よろしくb」

オブリック:「いや待って急過ぎwwww」

バイセプス・フェモラリス:「いきなり出張命令とか横暴でしょ」

オリバー:「いくらで引き取るのだッ? 今800ほどあるが」

ハムスト:「まだイベント消化しきれてないのに (´・ω・`)」

バイセプス・ブラキ:「パワハラだー」

ヴィクター:「確かボトルキャットの件でしたっけ」

カルロ:「うん」

――――――――――――――――――――――――



ちなみにこのダンジョンで初期に手に入るアイテム『ホムロッチ』を使えば、ダンジョン外でもチャットが出来る。

今ではこうして仕事の軽い打ち合わせ等もチャットで行っている。


個人チャットで、金の亡者から仕事の具体的内容が送られた。

怪しいと思われる場所の調査、および制圧、おまけにピンポン猫の救出、か。


……5人も要らなくないか?


まぁいいか。

準備するとしよう。


俺はダンジョン脱出用ワープアイテム「キメラの尻尾」で脱出する。

カボチャ猫を1週間分世話してくれる、魔獣シッターの者に連絡しなければ。



◇ ◇ ◇ ◇



・錬金術師ヴィクター視点



翌日。


カボチャ猫を魔獣シッターに預け、いざ中央都市チザンへ。

猫トラに乗り、俺達は向かう。

背中はもっふもふで、温かかった。


そして中央都市チザンに到着。


さっそく飛行型のバードホムロットを空中に転送。

中央都市は広いが、ホムロットは小型とはいえホムンクルス。

情報処理能力は人間のそれを圧倒的に凌駕りょうがする。



「疑わしい場所は3箇所あるな……どこから調べる?」



俺はホムロッチの地図アプリを起動。

3箇所に印を付け、他の4人に見せる。



「いや、2、2、1で分けて調べよう」


「「ああ」」


「え? 5人で一緒に順番に調査するんじゃないのか?」


「分かってないなヴィクター。

そんな事をしたら、攻め込んだ所が残り2つへ連絡をまわして、逃げられるだろうが」



攻め込む、って。

仕方ない時は制圧、と言われているが、一応これバレないようにこっそり調査しろと言われてるのに。


そして組分けの結果、俺は1人チームとなってしまった。


まぁいいか。

ささっと終わらせることにしよう。



◇ ◇ ◇ ◇



・錬金術師ヴィクター視点



ここが偽ボトルキャットの工場、といったところか。

錬金術工房自慢の魔道具、透明化装置を使えば、俺の姿は他の者には見えない。

今も堂々と工場内を歩いている。


中では職人が、せっせとボトル内部に小部屋などを作っている。


そして奥。

あそこにピンポン猫の繁殖場所があるようだ。


まずはピンポン猫の安全確保から始めよう。


ビーッ! ビーッ!


警告音が鳴る。

はて、俺は何か見つかるようなヘマをしただろうか。



『第2、第3工場に侵入者が現れたとのことです!

念の為、当第1工場も警戒態勢に入ります!』



アナウンスが聞こえ、職人たちはあたふたする。


あの無能ゴリラども。

見つからないように調査しろと言われてただろうが。

……面倒だからと力技でゴリ押ししたな?


俺はピンポン猫の繁殖場と思しきケージに近づく。



「み」


「ズキュゥゥゥーン!」



ケージの中には、マシュマロサイズの白、黒、茶色などの毛玉が沢山居た。

その愛くるしさに思わず奇声を放ってしまった。



「こっちから声が聞こえたぞぉーー!!」



やば、見つかりそう。



「仕方ない。ホムロット転送」



俺の自慢のホムロットを3体、ホムロッチからこの場所へと転送した。

飛行型のアークドラゴン、陸上型のヘルビードル、地中型のディープシャーク。

俺の編成はバランス型だ。



「殺さずに全員捕らえろ」


『了解ッ!』



さて、ピンポン猫のケージだが。

防犯設備など特に付いていないから、そのまま持ち運ぶことにしよう。

よっこいせ。



『捕縛完了ですッ!』


「ご苦労さま。今、猫トラを工場前に呼びだしている。

猫トラが来たら全員乗せて、魔獣都市マタタビまで連れて行くとしよう」



こうして俺の担当している工場の調査(という名の制圧)は終わった。

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