481.【後日談4】映画監督ヨツバ その4


中央広場でのんびりしている黒茶色の毛皮のネコ科魔獣の親子にヨツバが話しかける。



「もしもし、そこの奥さん!

子どもを2時間ほど貸してくれませんか?」


「ぶみー(何だいあんたは!

うちの子に何するつもりだい!

駄目に決まってんだろ!)」


「心配しなくても、ただの映画撮影ですよ。

危険な事はさせません。

もし承諾していただけたら、こちらの高級おやつ詰め合わせをプレゼントしますよ」


「ぶみゅ(いっといで子どもたち)」


「みゃーん(ママに売られたー!?)」


「ぬぅあー(酷いやー!?)」



キジトラの子どもネコ科魔獣達が騒いでいると、父親っぽいやつがやって来た。

ちなみに猫と同様、ネコ科魔獣の父親は子育てには基本参加しない。



「うーむぅ(俺はその子ども達の父親だ。俺の分前わけまえもあるんだろう?)」


「ぶみゃー(何だいアンタ!

いっつも子育ての手伝いせずに遊び呆けているくせに、こんな時だけ親気取りかい!

邪魔だよ、シッシッ!)」


「うぅーん(ごめんなさい)」



母親ネコ科魔獣にフシャーされて恐縮している父親ネコ科魔獣。

人間と同じく母の方が強い。


ヨツバは子どもネコ科魔獣をキャリーバッグに詰め、撮影場所へと向かった。

母親ネコ科魔獣も付いてくるようだ。


父親ネコ科魔獣も一応付いてくるらしい。

そしてその後ろには関係ない野次馬のネコ科魔獣達が。



「にゃわーん(わーい、行列だー!)」


「うんみゅう(お金儲けの匂いがする)」


「なう(高級おやつを分けてもらえると聞いて)」


「みゅ~(おいらもおやつ欲しいにゃ~)」



俺はその様子を建物の屋根の上から眺める。

100を超える数のネコ科魔獣がヨツバに連れて行かれる。

ハーメルンの笛吹きかな?



◇ ◇ ◇ ◇



やって来たのは、学校区画の体育館。

床には一面にブルーシート、所々マットが敷かれている。

壁もブルーカーテンで覆われている。


ヨツバはキャリーバッグから子どもネコ科魔獣を取り出し、床に置く。

子どもネコ科魔獣は、付いてきた母親の所にトテトテ歩いていった。



「さて、撮影ですが、こちらのマイクロバグ・カメラを使用します」



ヨツバの手から小さな虫型のロボットが放たれる。

ロボットはぶーんと飛び回る。

そんな動きをしていると……


バシッ!

白猫リリーが走ってきてマイクロバグ・カメラを捕まえ、かじる。

やはり狙われたか。



「みゅ~(美味しくないにゃ)」


「ちょっ!? 食べ物じゃないです!

吐いて、吐いて!」



ヨツバがリリーのほっぺをつまんで口をあーんさせ、吸引スキルでロボットの破片をすべて回収する。


その間に他のネコ科魔獣は、ブルーシートの下に潜ったりして遊んでる。

自由な奴らだ。



「はぁ、せっかく用意した最高級カメラが……仕方ない、画質が多少荒くなりますが、首輪型PCに付属してるカメラを使いますか」



ヨツバは自分の首に付いているPCで撮影することにしたようだ。

画質が荒くなると言っても前世のハ○ビジョンの数万倍の画素数だから、目で見る分には違いがわからないだろうけどな。


ヨツバは子どもネコ科魔獣に指示し、歩いてもらったり、ジャンプしてもらったりしている。



「よーし、その箱の上からジャンプしてください!

はいカット! いい絵が撮れました!」



箱といっても、子どもネコ科魔獣の撮影用に作られた数cmくらいの高さの小箱だけどな。


しばらく撮影してたら、子どもネコ科魔獣がへばったので、休憩となった。

母親と一緒にマットの上で転がっている。



「ある程度の画像データがあれば、それを自動3Dモデル化、3Dレンダリングが出来ます。

そうすればあとはこっちでデータを編集して、映像が作れます。

音声も同様に、いくらかサンプルがあれば自動でボイスロ○ド化出来ます。

にしても近未来の技術は凄いですね。

私一人で、前世のプロ1000人分以上の働きが出来ますよ。」


「にゃー(まるで魔法だな)」



その後ヨツバは子どもネコ科魔獣の他に、集まったネコ科魔獣達にもデータ使用の許可も取り、撮影した。


撮影終了後、協力者全員に高級おやつセットを配った。

協力してくれなかった者が恨めしそうにしていたが、仕方あるまい。


そして映画は1週間で完成。

中央広場でお披露目会となった。


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