472.【後日談4】魔王が集まる その3


サイボーグ魔王のデウスは各テーブルへ歩きつつ、喋り出す。



「食べながらでいいので、まずは大まかな情報伝達から行うとしよう。

ここ1000年で大きく変わった事は、先程渡した新聞の見出しにある通りだ。

『嫌魔王集会』と呼ばれる、魔王を積極的に敵対視している神の集会の解散。

『天罰遂行部』と呼ばれる、神々の下す天罰や粛清を管理している組織の崩壊、それに伴う大量の神殺し。

いずれもこの、トミタという魔王による功績だ」



お肉を咥えている俺を、デウスが持ち上げた。


だが俺は、くるりんと体をひねり、デウスの胸を蹴って拘束を振りほどき、バク転しつつ着地する。

食べながらでいい、と言っておきながら人の食事の邪魔するなし。

人じゃなくて猫だが。



「ごふっ……失礼した。

ではトミタの功績を讃え、863年前に亡くなった堕天使ルシフォォーの代わりに大魔王四天王に就任させたいと考えている。

誰か異議のある者」



大魔王四天王、それはデウスの次に偉い魔王の称号。


別にデウスを支えるための称号ではなく、純粋に出来る事が増えるだけの、お得な称号だ。


だが、



『異議あり』と首輪型PCで打ち込む。


「ふむ? トミタ自らが反対するのか。

大魔王四天王になる事にデメリットは無いが。

今とは比べ物にならないほどの恩恵が得られるのだぞ?

何が気に入らない?」


『なぜなら、ルシフォォーなら先週に蘇ったからだ。

彼を押しのけて大魔王四天王になると彼に恨まれてしまうからな』と打ち込む。


「「「な、何ぃぃいいい!?」」」



まぁ奴は今、力を回復させるためにコソコソと動き回っているようだが。

プライドが高い魔王なので、勝手に大魔王四天王から降格されたと知ったら、キレて俺を殺しに来るだろう。


別に返り討ちにしてしまうのは簡単だが、ルシフォォーの居る世界の神から過干渉はやめてくれと言われているからな。

大魔王四天王という地位を奪ってわざわざあおる必要もあるまい。



「そ、その情報を詳しく」


『うるせぇ自分で調べろ』と打つ。


「クッ……機械兵達よ、行ってこい」



デウスは自分の部下の機械兵を調査に向かわせたらしい。

俺は“自分で”調べろと伝えたはずだが。

あんなチャチな機械兵でルシフォォーを出し抜けると思っているのだろうか。


ま、俺には関係のない話か。


それにしても、なかなか良い絨毯使ってるな。


俺は体を横にしてみる。

良い触り心地。

お腹が膨れたので眠くなってきたぞ。



「ではトミタよ、他に何を望む」


「……ZZZ」


「キャー! 可愛いー!」


「デウス様の前で、よく昼寝が出来るな……」


「ふむ、仕方ない。では続いて表彰を行う。

呼ばれた者は前へ」



◇ ◇ ◇ ◇



絨毯の上が気持ち良かったので、うっかり寝てしまったようだ。


さて、周りに誰も居ないようだが、どうなっているのやら。



『レクリエーションとして隠れんぼをしているようだ。

トミタを含め5名が鬼となり、残りの魔王はこの屋敷のどこかに隠れているぞ』



首輪型PCの中に居るソフが知らせてくれた。


シルフ婆さんも隠れる側か。

俺を起こしていないあたり、本気で隠れているのだろう。


ホールに設置してある時計を見ると、制限時間は15分で、現在残り時間3分らしい。

で、見つかってない者はあと20名、か。


別に勝っても負けてもどっちでもいいが、俺も探しに行くとしよう。


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