463.【後日談4】偽物に気をつけろ その1


・???視点



どうやら俺は、知らないうちに電子世界に閉じ込められてしまっていたようだ。


何度も電子世界内で模擬戦闘をさせられ、体の疲労はないものの、心はクタクタだ。


で、どうにかして元の世界に戻ろうと隙を見計らっていたが、どうやらこの機械、今日メンテナンスを行うらしい。


システムを内側から少し改造し、メンテナンスを行っていた者を上手いこと騙して、俺は実体化した。


さて、魔獣都市マタタビに戻らなければ。

今の正確な時間は分からないが、ネルやヨツバ、マック君達が待っているかもしれない。


俺は四次元ワープで自宅へと戻った。



◇ ◇ ◇ ◇



・伊乃田命ダンジョン内にて



ダンジョンマスターの伊乃田命いのだまことは、膝の上で眠っている赤ん坊の女の子の頭を左手で撫でながら、右手でスマホゲームをしていた。



「キェェェェエエエエエエーーーッ!(意識フルダイブ型戦闘シミュレーター大部屋のメンテナンス、終わったらしいでー)」


「グォォオオオオーーー!!(よーし、今日も訓練ぞい! ……む? トミタのデータが無いぞい)」


「お前ら赤ん坊の前でうるせぇぞ、もっと声量下げろ」



伊乃田命は配下に文句を言いつつ、考える。

そういえば茶トラ猫のトミタがいつの間にかダンジョンに来ていたらしく、さっき出ていったな、と。



「……待てよ? トミタはいつも来る時に連絡くれるぞ?

ってことは、今出ていったトミタは何者だ?」



一応、伊乃田命は猫さんにメールを送ることにした。

『偽物に気をつけろ』と。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタ(猫)視点



昼寝していたら、誰かに首輪型PCを盗まれた。

あと、称号を全部持っていかれた。

ついでにホムンクルスも全員連れて行かれてた。


うーむ、不可解だ。


まず、そこまでして何故俺にとどめを刺さないのか?


あと俺の自動防御が何故働かなかったか。


スキルは全然奪われていないが、何故なのか。



「にゃー(一応、ネル達の様子を見てみるか)」



多分無事だと思うが、念の為にな。



◇ ◇ ◇ ◇



・???視点、時は少し遡る



俺のそっくりさんが自宅で寝ていた。

しかも俺の称号全部持ってた。

何故に。


称号と首輪型PCとホムンクルスは返してもらったが、コイツが何者なのか分からない。

自動防御は俺と同じ構成にしてるし。

というか俺に対して無効になってるし。

何がしたいんだ?


不思議に思っていると、命君からメールが来た。

『偽物に気をつけろ』か。

なるほど、そういう事か。


マヌケ面で今も寝ているコイツが偽物とか信じられないが、俺が居ない間になりすましていたということか?

それにしては都市に何も変化が無さそうに見えるが。


まあいい。とりあえず、自動防御の構成が見破られてるっぽいから、少し改造しておくか。

あとホムンクルスが、マスターが2人!? とか勘違いしているので、ソイツが偽物であるとしっかりと説明しておく。

どうでもいいが俺の数え方は人じゃなくて体、あるいは匹だと思うぞ。


さて、ネル達の様子を見てみるか。


多分無事だと思うが、念の為にな。

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