458.【後日談4】アサシン・ナンシーさん



□前書き□


あの虫が出ます。

食事中の方はご注意ください。



□□□□□□□□□□□




ネコ科魔獣のトイレの世話は、基本的に人間が行う。

人間が足りない場所はゴーレムが行う。


何で全部ゴーレムに任せないのかというと、ゴーレムだけにあらゆるネコ科魔獣のお世話を任せたら、人間いらないんじゃね? ってなるからだ。

ネコ科魔獣達はドライで薄情な奴が多いから、多分人間を邪魔者扱いしてしまう。


だから、ヨツバが「全自動で餌やりと遊びとトイレ掃除を全部やってくれるゴーレムください。

ママに楽をさせたいんです」と言っても、俺は首を縦にふることはしない。


ナンシーさんが、サバさんのウ○コをスコップで掘り起こし、専用の臭い消しゴミ袋に入れる。



「そういえば、猫さんのトイレのお世話、したことないわね」


「そだねー」



俺は基本的に森で済ませているからな。

人前でトイレするのに抵抗があるのは、前世の影響か。



「まぁアイドルはウ○コしないって言いますし」


「にゃー(誰がアイドルだ)」


「サバさんのお尻、拭いてあげたよー。

次は猫さんも拭いてあげるー」



待て、ネルよ。それサバさんを拭いたウエットティッシュだろ。

やめろ、それで俺を拭こうとするんじゃない。


逃げようとしたら、後ろからヨツバに抱きかかえられる。

あっ、やめ、待って。


……ぎゃーーーー!!



◇ ◇ ◇ ◇



ナンシーさんは普段からニコニコしていて、温和で、マイペースな人だ。

怒る事もあるけど、それはネルやヨツバがよほどの事をしたときくらいだ。

その時だって、別に眉間にシワを寄せたりしない。


だがそんなナンシーさんでも、鬼のような形相になる事がある。

それが今、奴が現れてしまったような時だ。


カサカサカサ。


黒光りするゴッキーが、天井に張り付いている。

しかも食堂の天井だ。

現在お客さんが食事中の状態で。


幸いナンシーさんと俺以外、誰も気づいていない。

ナンシーさんはニコニコしているが、目が笑っていない。


ゴッキーが天井を歩き、食堂から廊下へと出た。


ナンシーさんも廊下へ出てそっと食堂への扉を閉め、隠し持っていた投げナイフをゴッキー目掛けて投げた。


ザクッ。ゴッキーにナイフがぶっ刺さる。

さすが元冒険者。


天井に刺さったナイフを、ナンシーさんはジャンプして取った。

スカートの中は白パン!

って俺はスケベオヤジか。



「うふふ、このゴミ虫、どうしてくれましょうか。

あら猫さん、これ食べる?」



プイッ。

俺はそっぽ向いた。



「仕方ないわね、外に捨てておきましょう」



ナンシーさんが玄関の扉を開けて、ひゅっ、とナイフを振ると、ゴッキーの死骸が外に飛んでいった。



「みゃー(あっ、虫さんだー。いただきまーす)」



死骸はすぐに外のネコ科魔獣のおやつになりましたとさ。

めでたし、めでたし。

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