453.【後日談4】魔獣都市マタタビ誕生祭 その2


翌日。学校区画の倉庫その3にて。

俺は催し物用の机、椅子、飾り付け、機材、舞台等が綺麗に並んでいるのを見て、満足する。

昨日、ニャホーオークションでポチって、黒ぬこヤマモト宅配便さんに運んでもらったのだ。


あとはこれを指定の場所に運べば完了だ。

人間が数人で3日前くらいからとりかければ、十分に間に合う。

俺やホムンクルスなら一瞬で終わらせられるけどな。



「にゃー(よし、宿屋に昼寝しに行くか)」


「猫さんみーっけ」



後ろからネルに抱っこされる。



「シャム姉さんのパパとママが、新作のパンを焼いたんだってさー。

パンの試食会するから、宿に行こー」


『俺はパンは食わないぞ』と首輪型PCで打ち込み、宙に投影する。


「猫さんには、パン無しのミートパイをあげるよ」


『タコ無しのたこ焼きかよ』と宙に投影する。



そもそも、ミートパイのお肉にしても、塩辛く味付けしているから、食べないんだけどな。


ネルの背中をぎゅむ、と前足で掴みながら、抱っこされた俺は宿屋に連れて行かれるのだった。



◇ ◇ ◇ ◇



「ううん、これは少し塩辛いですね」


「タルトおいしー」


「味は良い、が、このミートパイは手が汚れるのだな。

紙に包むなどして売ればどうか?」


「なるほど」



ネル、ヨツバ、ナンシーさん、シャム、スペンサー君、そしてシャムの両親がテーブルに着く。

新作のパンをかじりつつ、コーヒーをすすりつつ、互いに感想を述べる。


俺とサバさんは、ナンシーさんがくれたネコ科魔獣用のササミチップスを食べつつ、まったりしている。

シャム一家の所のネコ科魔獣達は遊びに出かけているらしい。



「雑貨屋クローバーにはパンを置かせて貰っているが、どうもあの店は、他のパン屋からも仕入れているらしいな。

前に少し食べてみたが、味は負けていない! が、値段で負けている。

値下げすれば赤字は確実だし、ううむ……」



雑貨屋クローバーは、黒ぬこヤマモト経由で卯月うづきパンも仕入れている。

俺が生前から知ってる大手パンメーカーだ。

味はチャチいけど値段はお手頃で、コンビニによく置かれているパンだ。


シャムの両親はお金を貯めて一軒家を購入しパン屋を開きたいらしいが、今の所そんなに儲かっていない。

雑貨屋クローバーとナンシーさんの宿屋のみで販売してるから、客が限られてくるんだよなぁ。

どっかの施設や会社、あと他の都市に出荷したりすれば、もっとお客さんが確保出来ると思うんだが。



「そうだ! 今朝、こんなチラシが来てたんですよ!

『魔獣都市マタタビ誕生祭の学校区画で出店したい方、募集中!』

他の都市からも人が沢山来るから、PRに最適じゃないですか!」


「ぴぃ、あーる?」


「アピール! 宣伝の事ですよ!」



ナイスだヨツバ。

シャムの両親が出店して、上手くいけばコネが出来て、販路開拓につながるぞ。



「ほう! 出店料もタダ、材料以外の準備は向こうがしてくれるのか!

急いで申請しに行こう!」


「いい場所が確保できればいいのだけど」


「場所は早いもの勝ちみたいだから、パパが言うように急がないとねぇ」



シャム親子は試食会を切り上げ、役所に向かった。


シャム親子はフットワークが軽いから出店に応じてくれたが、やはり1週間前というのでは準備が間に合わない、という店が多かった。

来年度からはもっと早めの告知が必要だな。


そして、1週間という日があっという間に過ぎて。


魔獣都市マタタビ誕生祭開催当日となった。

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