450.【後日談4】捜査します
魔獣都市マタタビには、ネコ科魔獣は入らないでください、という店がいくつかある。
服屋(毛だらけにされる)、本屋(爪とぎされる)、家具屋(言わずもがな)などだ。
前世と違い飲食店はOKだ。この都市のネコ科魔獣は清潔だからな。
で、今日は猫のお巡りさん達と一緒に、靴屋に来ている。
ここも本来はネコ科魔獣は入ったら駄目と言われている店だが、捜査のためだ。
どうやら、店主が違法薬物を取り扱っていると噂されているらしい。
お気に入りのネズミ臭付きの猫じゃらしを咥えた、渋い顔の黒猫魔獣、通称ボスが呟く。
「にゃんくるにゃ(魔獣都市中にある猫像の監視を
もし本当に違法薬物を扱っているのなら、相当の
「にゃー(だから念のために俺を呼んだのか)」
「にぃにぃ(肉球魔王様のお手を
ボスは、魔獣幹部相当の者のうちの1体。
彼は今日も魔獣都市マタタビの平和のために働く。
ボスが部下達に命令する。
「にゃるん(例のブツは普通に探しても見つからない場所にあるはずです。
私の予想では、二重底になっている靴があるはずです。隅々まで捜査しなさい)」
「なー(はっ!)」
ネコ科魔獣達は、店内の靴の中に入る。
「なーん(ここか?! ここにブツが隠れているのか?!)」
「みー(うーん、いい入り心地)」
「みゃう(おやすみなさーい)」
ネコ科魔獣達は、各自好き勝手に捜査している。
だが、しばらく経っても成果は出ない。
靴屋の店主が現れた。
「ですから、私の店にそんな違法薬物は無いと言ってるじゃないですか、お巡りさん」
「にゃるる(ふむ、確かに、それらしい臭いもしません。しかし、この店が一番怪しいのです)」
「臭いがしないんでしょう? ネコ科魔獣の鼻を誤魔化せるわけがないでしょう?」
「にゃー(うーん、俺じゃ体が大きくて入らないな)」
靴に入ろうとしたが、無理だった。
代わりに靴を被る。
真っ暗だぜ。
店内全部、あと彼のレンタル四次元空間内も全部探したが、ブツは見つからなかった。
「にゃんくるに(肉球魔王様、お手上げです、ヒントを頂けませんか?)」
「にゃー(ヒントその1、魔道具で臭いを消している。ヒントその2、靴のサイズの同じお客さん)」
別に靴に臭い消しの魔道具を仕込む事自体は変じゃない。
靴以外で臭い消しの魔道具を使うと怪しまれるけどな。
体が臭う場合は風呂に入るなりするだろうし。
なのでネコ科魔獣は気が付かない。
誰かと誰かの靴が入れ替わっていたとしても。
「んにゃる(……なるほど! この靴屋はあくまで取引場というわけですか!
同じ見た目の二重底の靴を交換すれば、外に設置された猫像を欺くことが出来ます!
ということは、この靴屋に出入りする者の中で、同じ靴を履いている者の履歴を猫像の映像から調べれば、取引人が特定出来ます!)」
「くっ! バレては仕方ない!」
「びゃぁぁあああ!!(わぁぁ、まぶしー?!)」
店主は、【閃光】スキルを用いてネコ科魔獣達の目潰しをした。
その隙に逃げようとする。
だが、ボスが店主にタックルし、店主が倒れる。
そして素早く手錠をかける。
ボスの耐性の前には、この程度の目潰しなど通用しない。
「にゃるっ(業務妨害で逮捕します!)」
「にゃー(お疲れさん。あとは取引人の特定が済めば、解決だな)」
「にゃんくるなー(肉球魔王様はご無事でしたか?! ……何やってるのですか?)」
何って、靴を被っているだけだが。
かぶり心地はまぁまぁだが、新品なので革のニオイしかしない。
誰かが履いた靴の方がいい香りがするから、靴は中古に限るな。
お巡りさん達は帰りに病院に寄って、目の異常が無いのを確認して、解散した。
俺はお土産に革靴を貰い、被ったまま宿屋に向かうことにした。
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