436.【後日談3】O・SA・SHI・MI!


学校制度が始まって1ヶ月半。

魔獣都市マタタビの住人は、学校制度にだいぶ慣れたようだ。


このタイミングで留学生を受け入れることにした。

現地住民が慣れていないと混乱を招くからな。


ここは学校区画にあるマタタビ会館大ホール。

他の魔獣都市や他国から来た留学生200名がここに集まり、魔獣幹部達が前のステージで説明をしているのを聞いている。

留学生の彼らには約1年、この都市で学んでもらう。


俺は彼らの後ろ姿を見守りつつ、大ホールの端っこに設置してある箱の中で、他のネコ科魔獣と一緒にまったりしていた。


説明が終わり、留学生のアザラシ科魔獣の1名が俺の所にやってくる。



「キュウ!(肉球魔王様! つまらないものですが、どうぞ)」



彼は自分の腰に付けている【収納】を付与したポーチから、巨大な魚の切り身を取り出した。

ふむ、マグロっぽい色と香りだな。

ポーチの効果で、獲れたて新鮮な状態を維持していたらしい。



「「「みゃあああああ!!(それは、魔獣都市シャケの名物! O・SA・SHI・MIだーーー!!!)」」」


「にゃー(うるさいぞ)」



俺の周りのネコ科魔獣のテンションが上がる。

『ありがとな』とエメラルド板に刻む。


O・SA・SHI・MIを刺身にして配ってもらうために、俺は食堂に移動する。

給食はここで食べることになっている。


配給係の人間にO・SA・SHI・MIを渡し、先着順で分けるように頼んだ。

さっそくネコ科魔獣が群れて大混雑している。


その様子を、俺とヨツバは呆れながら見守る。



「猫さんはO・SA・SHI・MI要らないんですか?」


「にゃー(そんな必死に取り合うほどのものでもないだろ)」


「でも猫さん、近未来日本で刺身、分けてくれませんでしたね?」


「にゃー(この頃、忘れっぽくてなぁ)」



食い物の恨みは恐ろしい。

くわばらくわばら。



◇ ◇ ◇ ◇



学校区画に植わっている木に登ってのんびり横になっていると、「キュー!」と悲鳴が聞こえた。

何が起きたのか、猫像の映像をチェックする。


んー、あらま。


留学生の毛づくろいをしていたネコ科魔獣が、ついうっかり留学生をガブリと噛んでしまったらしい。

被害者は朝、O・SA・SHI・MIをくれた奴だな。

可哀想に。【ヒール】をかけておくか。


そして、俺の眼下で、ネコ科魔獣がゴミ箱にタックルする。



「なー(このほとばしる熱いパトスを受け止めてみろー!)」


「んみゃ(こらー! ゴミ箱をひっくり返すなー!)」



ネコ科魔獣は所構わず遊ぶ。

誰にも止める事はできない。


いたずらしたネコ科魔獣と、それを追いかけるネコ科魔獣が遠のいていく。

今日も平和だ。


俺は下に降りて、散らかったゴミを掃除し、ゴミ箱を直した。

ついでにゴミ箱を地面に固定しておくか。

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