435.【後日談3】お母様?
夜。元治癒大臣の蒼髪女性のコーディの部屋にて。
俺は久々に彼女と【ヒール】談義をしていた。
「……じゃあ【ヒール】を頻回にかけると……効きが悪くなる理由は?」
『体や病気が【ヒール】に対して耐性を持つようになる』とエメラルド板に刻む。
「薬に対して……耐性を獲得する理屈は……理解している。……【ヒール】に耐性を持つ理屈が……分からない」
『体が【ヒール】耐性を獲得するのは、簡単に言えば過労だな。
2型糖尿病によって高血糖になっている患者の体内で、膵臓(すいぞう)が頑張ってインスリンを分泌している。
膵臓をさらに頑張らせたらどうなる?』と刻む。
「膵臓がへばって駄目になる……そうか、なるほど……【ヒール】で頑張らせすぎた結果が……」
『あと、病気に関しては、病原体が耐性を獲得するってだけの話だな。
【ヒール】によって生じた抗体に対する耐性、とかな』と刻む。
コンコン。
ドアがノックされる。
「アァー……キ……タ……ヨ」
「……いらっしゃい」
ゾンビキャットが、会合が終わって遊びに来たようだ。
邪魔にならないように、俺は帰るとしよう。
夜更かしさせた俺が言うのも何だが、絶対明日寝坊するだろうな。
まぁいいけど。
◇ ◇ ◇ ◇
昼。俺は宿屋の管理人室にて、ネル、サバさんと一緒に、お腹を天井に向けて昼寝していた。
ネルの義務教育はテストで満点を叩き出したので、免除だ。
見た目は11歳だが、実際は111歳相当であるため、新しく学ぶ事は特にない。
「あら、ネルったら猫さん達とお昼寝してるわね」
ナンシーさんが買い物から帰ってきた。
俺はもぞもぞと動いて、目を開ける。
サバさんはゴロンと転がり、俺の腹に前足を乗せる。
「みゃうー(うーん、お母様……)」
「にゃー(俺はお母様じゃねぇ)」
俺の腹をフミフミしても母乳は出ないぞ。
寝ぼけているだけなのだろうけど。
「あらあら。仲良しさんね。
私は夕食の準備をしているから、猫さんは二人をよろしくね」
ナンシーさんは買い物かごから食料を取り出し、管理人室から出ていった。
住人には無償で食材は提供されるが、あくまで自分達が食べる分だけだ。
宿や飲食店の食材は、商人から購入しなければならない。
といっても、ゴーレムが作った作物や肉なので人件費がかかっていないため、どれも格安で購入出来るのだけれど。
俺は包丁のトントン音を聞きながら、二度寝する事にした。
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