430.【後日談3】ヨツバは学校が作りたい その2


・ヨツバ視点



夜、私は魔獣幹部のにゃんこ達と一緒に中央広場にやって来た。



「ではさっそく、学校作りについて、色々と取り決めましょう」


「にゃー(学校というか教育機関な)」



猫さんも居るみたいだけど気にしない。



「まず、初等部、中等部、高等部に分けて考えましょう。それぞれ6年、3年、3年……」


「にゃー(いや、そんな長い期間は必要無いだろ。対象者は留学生なんだから、合計で長くても数年で終わるような感じにしないと)」


「猫さん、そんな目先の事ばかり見てどうするんですか。

留学生だけでなく、現地の若者も巻き込むべきです。

いっそ日本の義務教育みたいな制度も導入すべきです」


「んなー(義務教育? 何ですかな、それは)」


「義務教育というのはですね……」



私が説明し終えると、ネコ科魔獣達は全員顔をしかめていた。



「「「みゃあーー!(何年もお勉強に縛られるとか、嫌!)」」」


「ですが、知識を身につけることで、より豊かな生活が送れるようになりますよ」


「「「みゃう!(嫌なものは嫌なの! そんなのやりたい奴だけやればいいじゃん!)」」」


「……」



ネコ科魔獣達は義務教育反対が多数、というかほぼ全員だった。

まぁ仕方ないか。


むしろ人間ばかりが集まって、私の逆ハーレムがはかどる可能性が高まった!

よーし、次は人間相手に義務教育の説明をすることにしよう!







……。


…………翌日の昼間、中央広場にて。


雑貨屋クローバーで販売される新作のタルトをエサに、都市の人に集まってもらった。

というかこの都市、ホール的な施設が無いんかい。


まあいいや、後で学校作るついでに作ろう。


そして義務教育の説明を終える。



「なるほど。言いたい事は分かりました。

ですがそれは義務にする必要がありますか?」



聴衆の1人が質問してくる。



「というと?」


「いえ、現状でも、勉強したい者は雑貨屋クローバーで書籍を購入して勉強していますし。

それを義務化して、勉強したい者以外に勉強を強いることに、何の意味があるのか、と。

いえ、生活の質が向上し、将来の選択肢が増えるというのは理解しています。

しかし、それはあくまで希望者だけで行うのが良いのでは?」


「それは少し違います。

勉強を強いるのではなく、機会を平等に与えるのです。

特に理解の無い親の元に居る子どもや、貧しい生まれの子どもには、勉強の機会が与えられません。

その子の将来のためにも、こちらから勉強の機会を与えるのです」


「その子どもが勉強したいと思うならば、大人になってから、自分の力でお金を稼いで勉強すると思いますが」


「それでは遅いのです。頭が柔らかく吸収力がある子どものうちに勉強させる事が大事なのです」


「確かにそちらの方が能力上昇の幅が大きいか……」



よしよし、人間相手には今の所、好感触。







……。


…………その日の夜、中央広場にて。



「昨晩、そして今日の昼間に、私のホムンクルスを使って、この魔獣都市マタタビの住人全員に対してアンケートを実施しました。

アンケート内容は希望する勉強内容について、勉強期間、勉強時間について、あとその他意見など、です。

それらを集計した結果がこのようになりました」



首輪型PCで、宙にアンケート結果を投影する。

ネコ科魔獣が映像を触ろうとして、触れられずに不思議がっている。



「ネコ科魔獣は1週間に1時間以内が最多。講師が魔獣幹部以上でおやつ付きなら考えても良い、という意見がありました。

人間は1週間に15~25時間が最多。家事の手伝いをさせるから、あまり長時間の拘束は止めて欲しいという意見がありました」


「んなー(ふむふむ)」


「というわけで、ネコ科魔獣は週に1時間の、人間は週に20時間程度の義務教育を行うのはどうでしょう」


「にゃー(別に義務教育にこだわる必要は無いだろ。大学の一般教養の講義みたいに、好きな時間に好きな科目だけ取るようなのはどうだ?)」


「へぇ、大学ってそんな感じなんですか?」


「にゃー(まぁ俺はつまらない講義はサボっていたけどな。

最近の学生は出席が厳しいらしいけど)」



大学についての記憶が無いから、私は前世で大学に入る前に死んだのだろう。



「んなおう(それはいいのですが、問題は教師にうってつけの者が少ない事なのですが)」


「それは私のホムンクルスに押し付けましょう」


「にゃー(力技過ぎる)」


「まぁそれは一時的なものです。時間をかけて教師になる者を育成したり、募集したりすればいいです」


「うんみゅう(予算はいくらかかる?)」


「だいたい、このくらいでしょうか」



私は紙を取り出し地面に広げ、おおよその金額を書く。

魔獣幹部金の亡者が紙の上に乗っかる。

小さいから別にいいけど。

猫さんや他のネコ科魔獣が乗ってこようとするのはシッシッと追い払う。



「ネコ科魔獣の教師はどうしましょう。魔獣幹部以上の者と言われても困りますが」


「にゃー(何なら俺がやってやろう。週に1時間だけ適当に)」



その後、細かい事は魔獣幹部達が後で調整してくれることになった。

次は建物の建設だね。

森のエルフのチャールズ君に頼むことにしよう。


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