422.【後日談3】潜入! 魔獣都市マタタビ その1
・人間国からのスパイ視点
私は、とある人間国から派遣されたスパイだ。
魔獣都市マタタビの情報を持ち帰るように頼まれている。
人間国にはなぜか、魔獣都市マタタビの情報がほとんど無いのだ。
人間国からやって来た商人という体(てい)で、この都市に侵入することにした。
「ガルル」
都市に入る前に、門で荷物チェックを受けていると、二足歩行の虎の魔獣から首輪を渡された。
書き置きを見ると、この都市に入る者にプレゼントしているらしい。
……プレゼント?
人間国で使われている、奴隷の首輪のような効果だろうか。
まぁ付けないと怪しまれるので付けるが。
「ガルルゥ(あー、人間、俺の言葉が分かるか?)」
「! こ、これは?!」
「ガル(意思疎通の道具だ。首輪を付けた者同士が意思疎通出来るようになる。電子マネー機能も付いているぞ)」
「魔獣と意思疎通が出来るのか!
よく見ればあなたも同じような首輪を付けてるようだ。
ところで電子マネー機能とは?」
「ガルルル(俺もよく分かっていない。見えない通貨のようなものだ)」
「??」
まあいいか。
とにかく、魔獣都市マタタビに潜入だ。
◇ ◇ ◇ ◇
・人間国からのスパイ視点
この魔獣都市マタタビには、肉球魔王様と呼ばれる、魔獣国最強の魔獣が住んでいるらしい。
今回の目的の1つは、出来るだけ肉球魔王様の情報を集める事だ。
情報によれば、シルバーの首輪を付けたネコ科魔獣とのことだが。
「みゃん(鬼ごっこだー!)」
「なー(待て待てー!)」
全員シルバーの首輪付けているから、区別がつかない!
せめて毛色くらい情報は無かったのか!
キョロキョロしていると、渋い黒猫魔獣に声をかけられた。
何故か猫じゃらしを咥えている。
「にゃくる(どうされました? 迷子ですか?)」
「あ、いえ、肉球魔王様に挨拶したいのですが、どちらにいらっしゃるのかと」
「にゃるる(今日は雑貨屋クローバーに居らっしゃるはずですよ。案内しましょうか?)」
「お願いしても構いませんか」
「にゃんくるにゃ(いいですよ、こちらです)」
私は黒猫魔獣さんに付いていくことにした。
何故か私の後ろをテケテケと付いて来る金ピカの子猫も居る。
その後ろに青年も付いてきている。
何でゾロゾロと付いて来るのだろうか。
私がスパイだとバレた? いや、それならこんなあからさまに付いてこないか。
雑貨屋クローバーという店に着いた。
猫が葉っぱを咥えた看板の店だ。
中は、人間向けの雑貨や食べ物、ネコ科魔獣向けの雑貨や食べ物が半々といったところか。
「にゃるん(では私はこれで失礼)」
「ありがとうございます」
案内してくれた黒猫魔獣は去った。
彼が猫のお巡(まわ)りさんだというのは後に知ることになる。
さて、ここには沢山のネコ科魔獣が居るが、肉球魔王様はどれだ。
ネコ科魔獣用ジャーキーの入ったショーケースに顔をくっつけてるあのネコ科魔獣か。
それとも透明な袋に入った猫じゃらしを勝手に開けようとしているネコ科魔獣か。
「にゃー」
それとも、カウンターの上であくびしている茶トラのネコ科魔獣か。
ん? 人間の客の中に、見知った顔があった。
俺は声をかける。
「あなたは確か……」
「あぁ? って、後輩君じゃねーか」
スパイ仲間の先輩が居た。
何故か三つ目の白いネコ科魔獣を抱っこしている。
ネコ科魔獣は寝てるみたいだ。
先輩は首輪の電子マネー(?)機能を使ってネコ科魔獣のおやつを購入した後、付いてこい、と私を先輩の自宅へと呼んだ。
◇ ◇ ◇ ◇
・トミタ視点
雑貨屋クローバーの店番をしていたら、金の亡者が話しかけてきた。
カルロ君は暇だから付いてきたっぽい。
「うんみゅう(さっきの男、肉球魔王様を嗅ぎ回っていた)」
「にゃー(人間国のスパイだな。で、それが?)」
「うみゅうんみゅ(始末しない?)」
「にゃー(悪い事してるわけじゃないし、別に放って置いて良くないか?)」
「うみゅう(さすが肉球魔王様。器の大きさが違う)」
いや、鑑定神ソフレベルの奴が俺を嗅ぎ回っていたなら警戒するが。
さすがに人間の若造相手に、そこまで神経質になる必要もないだろう。
俺は店番をヨツバに任せ、昼寝することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます