410.【後日談3】雑貨屋クローバーの住人へのお土産
森の連中にお土産を渡し終えたので、俺は雑貨屋クローバーの様子を見に来た。
今日はパン屋の娘の、赤髪のシャムが店番をしているらしい。
シャムが世話している子猫の他に、シャムの両親の世話している子猫もこの店の端っこに設置したダンボールの中に団子になって寝ていた。
シャムの両親はどうやら、シャムに子猫の世話を押し付けたらしい。
まぁ別に罰則とか無いからいいけど。
お、店のカウンターに、木製の鳥の像が置いてあるぞ。
シャムが置いたっぽいな。
もっと近づいてよく見てみよう。
カウンターに乗った俺は、シャムに抱き上げられる。
「駄目よぉ猫さん。猫パンチして倒すつもりでしょぅ?
どうしてあなた達ってすぐ、置物を突くのぉ?」
多分それは、生きてるかどうかの確認だな。
俺はそんな事しないけど。
シャムに抱きかかえられ、応接室に連れてこられた。
「お仕事が終わったら、ネルちゃんの所に連れていってあげるから、ここで待っててねぇ」
応接室に降ろされ、シャムは雑貨屋のカウンターに戻っていった。
いや、何で応接室なんだ。
店の隣の生活スペースまで連れて行ってくれよ。
……まぁいいか。
俺は応接室の机の上に、ゴマ汁団子やクッキー等の食べ物系のお土産を置き、『お土産です。皆で召し上がってください』と書き置きする。
あとは個別に渡すお土産だけだな。
シャムへのお土産は、ネルと同じく料理本の電子ペーパーだ。
ヨツバに預けてシャムへ渡すように頼んであるので、あとは他の連中の分を俺が渡すことにしよう。
ガチャリ。
金髪の元貴族、今はヨツバの奴隷のスペンサー君が2Fの図書館から降りてきたようだ。
「猫さん、か。旅行後のヨツバは酷く落ち込んでいて、我輩が声をかけても上の空だったが。
ヨツバは今どうしている?」
『寝込んでるぞ』とエメラルド版に刻む。
そういえば昔は、スペンサー君は俺の事を“さん”付けしてくれなかったけど、今は普通に猫さんって呼ぶんだな。
ヨツバの影響か。
「何かあったのか聞いても答えて貰えなかったが、悪い病気ではないのだな?」
『体に異常があるわけじゃないし、そのうち元気になるだろ』と刻む。
ついでにスペンサー君には、お土産に買った1000万円の高級腕時計を渡す。
高級な物が好きな彼は、こういうのが気に入ると思う。
『お土産の腕時計だ』と刻む。
「腕時計なら持っているが……これはお洒落なデザインだ。魔力が感じられないが、これは精巧なカラクリ仕掛けが施されているのだろうか?」
腕時計といえば魔道具なこの世界では珍しいのだろう。
オモチャをもらった子どもみたいに腕時計をいろんな角度から覗き込んでいた。
◇ ◇ ◇ ◇
・コーディ視点
昼寝していると、ふと胸が苦しくなってきた。
体を起こそうとしたけれど、動かない。
まるで何かの重しが私の上にのっているかのように。
これが金縛(かなしば)りというやつだろうか。
私は目を開ける。
「にゃー」
「……」
猫さんが乗っかっていただけだった。
◇ ◇ ◇ ◇
・トミタ視点
コーディには薬学の本のデータが入ってる電子ペーパーをお土産に渡してきた。
鍛冶場で忙しそうに仕事していたリオン君には、武器や防具などのデザイン集が入ってる電子ペーパーを。
リオン君の横で毛づくろいしていたブラディパンサーには数種類のキャットフードを置いてきた。
これで一通りお土産を渡し終えたぞ。
人数がそれなりに多かったから疲れた。
応接室に戻り、木箱に入ってのんびり過ごしていたら、木箱の中に子猫が3匹投入された。
「終わったわぁ。さてと、ネルちゃんの所に連れてってあげるわよぉ」
「にゃー(自分で行けるぞ)」
まぁ抵抗する理由も無いから、木箱ごとそのまま宿屋まで運んでもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます