398.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】ドラの話・土倉花が体育に行く


ドラゴニュートのドラとやらの話を聞いた。


どうやらヨツバはダンジョンの配下達と喧嘩したっぽいな。



「にゃー(で、お前らは現実に再現されるのを断った、と)」


「はい。我々と接する時間があれば、ヨツバ様はもっと他の事に時間を割くべきであると申し上げました」


「にゃー(何で?)」


「βテスト期間中の短い時間なら、我々と接しても、人生にさほどの影響は無いでしょう。

しかし、我々を再現するとなれば話は別です。

ヨツバ様の人生の貴重な時間を、我々に費やすよりも、もっと有意義な事に費やすべきかと」



解せぬ。



「にゃー(何が貴重か、何が大事かは、当の本人のヨツバが決めることだろう。

あいつも20歳だし、子どもじゃないんだ。

お前らはヨツバの願い通り、現実に再現されれば良いじゃないか)」


「ですがそれではヨツバ様のためにはなりません。

我々のような作り物と関わるよりも、生きている者との交流の方が大事です」



解せぬ。



「にゃー(要するに、お前らは自分らがゴミクズで無価値な存在だから、なるべく関わらない方が良いと言いたいのか?)」


「さすがにそこまで卑下しているつもりはありませんが」


「にゃー(そう言ってるようにしか聞こえないのだが。

つまりは、生きている者に敵わないから、自分たちは価値がない、ってことを言ってるんだろう?)」


「まぁ、そうですね。生きている者には敵いませんね」



つまらん奴らだな。



「にゃー(ヨツバなら、寝込んでいるぞ。

お前らのしょうもない意地のせいで、傷ついている。

ヨツバにとって大事なのは、現実の交流じゃなくてお前らと過ごす時間だったんだよ。

お前らは、ヨツバの価値観を否定したんだ)」


「……我々は間違っていたのでしょうか」


「にゃー(頭が固いな。

仮に現実に再現されるとしても、いくらでもヨツバのためになるように働きかける事も出来るだろう。

そうすればお前らが心配しているような、ヨツバが貴重な機会を逃す、みたいな事も無いだろうよ)」


「甘えていたのは我々だったという事でしょうか。

優しいヨツバ様に甘えて、自分たちが努力する事を諦めてしまっていたということか……」



ドラは俺に背を向ける。



「この話は持ち帰って、ヨツバ様の配下の皆と話し合うことにします。

貴重なお時間を割いてくださり、感謝します」


「にゃー(まぁ、頑張れ)」



ドラはダンジョンから去っていった。


さて、ダンジョンの中のNPCの様子を見るとするか。



◇ ◇ ◇ ◇



ダンジョン内は特に何も問題なかったので、ログアウトすることにした。


ヨツバは寝込んでいる。

この様子じゃ、夕方まで起きないかな。


まぁいいか。

俺はお土産を買いに行くことにしよう。

この前買った分では全然足りないし。


俺が買い物すると人目につくので、カモフラージュに土倉花に協力してもらうことにしよう。

ん? ホムンクルスに買いに行かせたらいいだろって?

こういうのは自分で選ぶからこそ良いんだよ。


四次元ワープで、土倉花の机の上にワープだ。


丁度彼女はUMA焼きそばを食べていた。



「ずるるる……ぶっ?! げほ、げほ……」


「にゃー(大丈夫か?)」



俺の姿を見て、むせたらしい。

何故に。


俺を恨めしそうに睨み、そしてため息。

何故に。



「肉球魔王様、何の用?」


『一緒にお土産、買いに行こう』と首輪型PCで打つ。


「この前、100人前くらい買ったよね?」


『全然足りない』と打つ。


「いったい何人に配るつもりなの?!」


『310人(?)くらいかなぁ』と打つ。


「多ッ! ってか人(?)って何?!」


『匹かな。いやでも人にも配るし』と打つ。


「そもそも私、今日、今から体育があるんだけど」



この近未来世界での学業は、基本的に自宅学習。

体育や音楽などは例外的に学校(俺の時代よりも教室数は少なく、こじんまりとしている)で行われる。



『終わるまで待つぞ』と打つ。


「じゃあ食べたら着替えて行くから」



焼きそばを食べ終え、土倉花はジャージを脱ぐ。

おっと、じっと見るのは失礼か。

俺は目をそらす。


むむ、そこの引き出し、いい感じに出ている。


ひょい。

俺は衣装ケースの引き出しの中に飛び込んだ。

服がいっぱいだ。

そして心地よい閉塞感。



「ちょ?! 何勝手に入ってんの?!

あああ毛が付く!」


「にゃー(心配無いぞ)」



俺くらいの猫神になると、自分の毛の操作も可能になるのだ。

無意味な抜け毛など生じない。


引き出しから俺は取り出され、ぞんざいに床に置かれた。

あぁ、引き出しが閉められた。


そして土倉花は外用の普段着に着替えた。

制服じゃないんだな。



「じゃ、行ってきまーす。

って、私の体操服入れに入るなし」


「にゃー(おっと、ついうっかり)」



手提げ型の体操服入れから出る。



「私が外に出ている間、部屋を勝手に物色したら駄目だから。

いい? 特にあの押入れは、絶対に開けたら駄目」


「にゃー(それはフリか?)」



さすがに家主が不在中に部屋の物色とかしないぞ。

やるなら本人の目の前で、だ。


そして土倉花は出かけた。


俺は暇だったので、土倉花に付いていくことにした。



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