391.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】星を喰らう狼



その狼の魔獣は、食べれば食べるほど巨大になったという。


神々は、狼の魔獣がやがて自分たちの脅威になると考え、災厄をもたらす魔獣であるという予言をでっち上げ、魔獣を鎖で封印した。


しかし、世界の終末の際に鎖は引きちぎられ、狼の魔獣は神々への復讐を開始したという。



◇ ◇ ◇ ◇



宇宙ステーションの一角にある隕石等観測部門。

観測員の彼は、いつも通りAIの補助下にて、隕石の観測をしていた。


宇宙と地球を繋ぐ機械は、大きな衝撃を受けると壊れてしまう。

なので、宇宙に漂う石が機械へぶつかる可能性がある場合は、あらかじめ処分するのだ。


とはいえ、ほとんどAIによる自動駆除装置にに任せておけば大丈夫なので、たまに彼が目視で確認するくらいしか仕事が無いのだが。



「……ん? 地球に影が見えるぞ?

おかしいな、今日は日食の予定は無いはずだが」



観測員は隣の部屋に行き、備え付けの太陽望遠鏡を覗いて太陽を見る。



「な、ななな、何じゃありゃー?!!」



大きな狼のようなものが太陽へ向かっていったかと思ったら、太陽を食い始めた。

狼はどんどんと大きくなっている。



「大変だ!! 地上に知らせないと!!

『はい、どうされましたか?』こちら隕石等観測部門! こちら隕石等観測部門!

太陽を食らう謎のUMAを発見! 現在の太陽の映像を送信致します!」



◇ ◇ ◇ ◇




国のお偉方えらいがたが緊急招集され、その巨大狼が太陽を食らう映像を眺めていた。



「……」



皆、言葉を失っている。


そして、狼が巨大化するにつれて、太陽を食らうスピードは上昇している。


あと3分ほどで食らい尽くすであろうか。


昼間だというのに、夜明けのように空が暗い。


そして、やや肌寒い。


このまま、もし太陽を失えば、地球上の生命は絶滅するだろう。



「太陽が消滅してしまいそうですが、どうしますか」


「とりあえず、これから起こる、いや既に起こっている混乱も含めた対応を検討する必要がある。

まずは暴動が起きると思われるので、それを抑えるために警官や自衛隊に準備させよう」


「各国との連携も必要ですね。

太陽が消滅すればとんでもない冷害が生じるので、それを解消するための核燃料、化石燃料の需要が高まるでしょう。

当然これらの高騰が予想されます。独占されないように早急な対応をしなければなりません」


「SFで地下深くの適温領域に空洞を作り、そこで暮らすというのを見たことが有るが、現実味を帯びてきたな……」



そうこうしているうちに、巨大狼が太陽を食らい尽くした。


だが、それだけではなかった。


暗視カメラがとらえた映像では、狼は次に水星をパクリとひと飲みした。


次に金星を食べた。


そして……



「おい、狼が地球目掛けて口を開けて飛んでくるのだが」



巨大狼は、その大きな口を開けた。


口の中は光っており、また熱を帯びているらしく、途中の浮遊した石などが溶けているのが見えた。


地球は間もなくあの巨大狼の口の中に入るだろう。


もうおしまいだ。



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