340.【後日談】人物紹介2・宿屋の住人たち
翌日。
俺は中央広場で魔獣幹部5体と合流した。
「にゃー(よし、全員揃ったな。じゃあ出発だ。まずはナンシーさんの宿屋に向かうぞ)」
ぞろぞろと移動する。
魔獣幹部以外に、野次馬が10体ほど居るみたいだが、まあいいか。
◇ ◇ ◇ ◇
まずは宿屋だな。
ネル達の紹介をするとしよう。
ちなみにヨツバとスペンサー君は今、雑貨屋に居るはずだから、宿屋には居ない。
俺は宿屋のドアをノックする。
「はーい。あら、猫さんに……何だかたくさん居るわね」
「にゃー(おはようございます)」
ちょいちょい。
俺は昨日、首輪PCで作った資料を、空中に投影する。
――――――――――――――――――――――――
ナンシーさん(37歳女性)
宿屋『アモルドルチッス』のオーナー。
ブロンズ色の髪をした女性で、性格は気さくでマイペース。
ネルとヨツバの母親で、元冒険者だった。
宿屋を経営していた主人が亡くなった後、経営を引き継いだという。
魔獣主人はサバトラ猫のサバさん。
――――――――――――――――――――――――
「あら、変わった鑑定結果ね」
ナンシーさんは、魔獣の誰かが鑑定結果を投影したのだと勘違いしている。
鑑定神ソフは、【鑑定】スキルが使用された対象物を調査し、その結果をスキル使用者に伝える。
スキル使用者の感覚や知識も借りて結果を出すため、スキルを使用すること自体が使用者の個人情報漏出となる。
俺のスキル【鑑定Lv100】は、俺の視覚情報とスキル使用前3分間の情報のみを送るように改造している。
当然頭の中は覗かせない。他人に考えを読み取られるのは気分が悪いからな。
「うんみゅう(この方は肉球魔王様公認バッジが付いていないけど、肉球魔王様の大事なお方)」
「んな(金の亡者は、既にレンタル四次元空間を提供しているんでしたな)」
「ガゥ!(他に何のサービスを提供出来るだろうか)」
魔獣幹部達は、うーんと頭を捻っている。
「ママー、どうしたの?
あー! 猫さんがお友達連れてきてるー!」
「にゃー(おはよう)」
ネルはサバさんを抱っこしている。
ちょいちょい、っと。
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ネル(11歳女性)
黒髪の少女で、性格は活発かつ自由奔放。
ナンシーさんの長女。
料理が得意で最近はナンシーさんの代わりに厨房に立つことが多い。
マック君から錬金術を学んでいる。
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サバさん(13歳男性)
サバトラの猫。性格は世話焼きで気まぐれ。
多くの人間語を理解している。
野良猫の長老として生活していた。
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「あら、サバさんって長老だったのね」
「みゃう(そうです! なので私を労ってください!
だっこしてください!)」
サバさんはネルの腕から飛び出し、ナンシーさんに頭をこすりつける。
「ネルって子が錬金術を学んでいる、ねぇ。
……ってことは、金の亡者、アンタの所に居るカルロが役に立つんじゃないかぃ?」
「わー! このネコ科魔獣さん、喋った!」
化け猫は今、サビ模様猫モードだ。
彼女はジャンプして、一回転する。
ポン! という音とともに人間に化けた。
ネルと同じ姿と服に変化した。
ただし耳と尻尾は猫のままだが。
「あら、ネルに化けたわね」
「わー! すごーい!」
「で、どうなんだぃ、金の亡者?」
「うんみゅ(カルロに、ネルの指導の相談してみる)」
どうやらネルはカルロ君のお世話になりそうだ。
「にゃー(よし、次は宿屋の中の住人の紹介だ)」
大型の魔獣のキメラ以外が、宿屋に入る。
「にゃー(おい、そこ。壁で爪とぎするな)」
野次馬のネコ科魔獣に注意する。
魔獣幹部達は、人間の困る事などを熟知しているからこのようなことはしない。
ということで、野次馬達には外で待っていてもらうことにした。
◇ ◇ ◇ ◇
「にゃー(ここが厨房。そこにいる夫婦は、パン職人のネオとクラリッサだ)」
「お? ネルちゃんが世話している猫か。
頼むから邪魔するなよ」
「あっち行きなさい、シッシッ」
シャムの両親はパンの生地を練っていた。
ネコ科魔獣が近づくと生地に毛が入るので、当然近づかない。
「フシャー!(肉球魔王様に対して何と失礼な!)」
「嫌われてるねぇ」
「ん? ネルが二人?!」
化け猫がネルに化けているので、ネルが二人居るように見えたのだろう。
化け猫はクスクス笑いながら変身を解いた。
「……何だ、魔獣か」
「猫さん、あっち行こー。マックも居るよー」
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ネオ(39歳男性)
赤髪の男。性格は粗暴で頑固。
パン屋『ネオの店』の店長。
元々は兵士だったが、クラリッサと仕事するために引退してパン屋になった。シャムの親。
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クラリッサ(43歳女性)
金髪の女性。性格は大人しいが時々ヒステリック。
王都のパン屋の娘で、上京したネオに口説かれ結婚。
父親が亡くなった時に、パン屋の名前を変えた。シャムの親。
――――――――――――――――――――――――
俺はシャムの両親のプロフィールを投影する。
「なお(パン屋……新しい窯でも手配しましょうか)」
「にゃー(リオン君に頼むとしよう)」
そして俺達は階段を登り2階へ。
◇ ◇ ◇ ◇
マック君の部屋の前では、パーシー君が腕を組んでいた。
「ん? 今日はマックは誰とも会う約束はしていなかったはずだが。
……何の用だ?」
パーシー君はいつでも剣が抜けるように構える。
どうやら俺の後ろの魔獣幹部達を警戒しているようだ。
――――――――――――――――――――――――
パーシー(27歳男性)
青髪の男性。性格は真面目で融通が利かない。
フランベル国の城の門番や、部隊長をしていた。
現在は仕事が無いので、マック君の護衛をしている。
マック君の夫。
――――――――――――――――――――――――
「なおん(護衛って……それにしてはこの男、ひ弱すぎませぬか?)」
「にゃー(まあ何かあれば俺が守るし、別にいいだろう)」
「なるほどねぇ。つまり肉球魔王様の負担軽減のために、この男を鍛えてやればいいんだね?」
「アァー……ト……ック……ン?」
「うみゅう(森に連れ出して魔獣と戦わせる?)」
「にゃー(命君のダンジョンで鍛えてもらおう)」
俺達がパーシー君の特訓案を勝手に相談していると、扉が開かれた。
「ああ、やっぱり! 廊下から猫さんの声がしたと思ったんだ!
ボクに何か用?」
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マクドーン・ハウエル(28歳女性)
銀髪の女性。性格は好奇心旺盛で努力家。
フランベル国で錬金術研究をしていた。
現在はカルロの錬金術工房で修行している。
――――――――――――――――――――――――
「マック、猫さんの後ろに居る、このネコ科魔獣達は知り合いか?」
「その金色の子は、金の亡者っていう魔獣幹部さんだ。
多分パーシー100人分くらいの強さだから、喧嘩売ったら駄目だよ?」
「俺の護衛は無意味か……」
パーシー君が落ち込んでいるのを、魔獣幹部達が囲んで肩をポンポン叩いて慰めている。
その隙に俺はマック君に『何か困っていることや、やって欲しいことがあったら、この魔獣幹部達を頼ってもいいぞ』とエメラルド版に刻む。
「そう? じゃあ早速お願いなんだけど、ボク専用の錬金術研究施設が欲しいな!」
『わかった。また今度、雑貨屋クローバーの倉庫地下に、部屋を作っておく』と刻む。
「ありがとう!」
ナンシーさんの宿の一室だけでは手狭になってきたのだろう。
チャールズ君に頼んで図面を作ってもらって、錬金術で作ってやるとしよう。
「にゃー(よし、宿屋はこんなものか。
次は雑貨屋クローバーに行くぞ)」
「なおん!(肉球魔王様が経営する、あの絶品食品店ですか!)」
食品店じゃなくて雑貨屋だ。
とはいえ現在、品物の8割は食品だから食品店を名乗ってもいいのかもしれないが。
俺達は宿屋を出て、雑貨屋クローバーへ向かった。
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