321.【後日談】不穏な空気
・ヨツバ視点
雑貨屋のカウンターで店番しつつ、猫さんにねだる予定の物を紙に書いてみる。
先週、猫さんは通販チートを修得したらしく、その能力でキャットフードの袋をたくさん買って喜んでいた。
本人はチートじゃないって否定していたけど。
私にも使わせてくださいと言うと『お前には5年早い』と拒否された。
猫さんのケチ。
代わりに欲しい物が有ったら、猫さんが購入してくれるらしい。
私が赤ん坊の頃にも同じ事言われたような気がする。
猫さんにとって私は、小さな子どもなのかな?
これでも私、もう20歳なんだけど。
まあいっか。
とりあえず欲しい物は、大量のニャろう小説本。
続きが気になる本がたくさん有る。
猫さんにお金を渡して、買ってもらうとしよう。
「何だ貴様らッ! 客ではないなッ?
その物騒な武器を捨てなければ、敵と見なすッ!」
ん? 店のガードをしているエルフのイケメン、オリバー君の声が聞こえる。
店の外に、武装した人間とゴリラっぽい魔獣が見える。
……おや、この都市にネコ科魔獣以外の魔獣とは珍しい。
「何の事でしょう。これは護身用の武器ですよ。
そこを通してください」
「とぼけるな人間ッ!
貴様、俺が注意する前から武器を振る事が出来る構えを取っていたではないかッ!
俺の目をごまかせると思うなッ!」
「イイカラ、店ノ入リ口カラドケ、ザコエルフ」
毛むくじゃらの一つ目魔獣が、オリバー君を殴ろうとする。
オリバー君は腰の長剣を、鞘を抜かずに右手に構え、優雅に一振りした。
すると一つ目魔獣が勢いそのままに、武装人間と魔獣達に向かった。
力の向きを逆方向に変えたっぽい。
合気道かな?
「オオッ?!」
「うわぁぁぁあああ?!」
「こっち来んなぁぁっ!」
ドッガラ、ガシャーン!!
一つ目ゴリラ魔獣が武装人間と武装魔獣達に突っ込む。
彼らはドミノ倒しになる。
武装魔獣はともかく、武装人間達が見た目重症だ。
大丈夫かな?
「にゃんくるにゃ(何事ですか)」
「これは猫のお巡りさんッ! 実はかくかくしかじか……」
「にゃるる(ほぅ、暴行ですか。ちょっと署まで同行願えますかな?)」
猫じゃらしを咥えた、渋い顔の黒猫魔獣が、倒れた人間達に向き直る。
いつの間にか、武装人間と武装魔獣は、ネコ科魔獣達に囲まれていた。
◇ ◇ ◇ ◇
・ヨツバ視点
「という事が、先日あったんですよ」
ボリ、ボリ、ボリ。
雑貨屋の床で、猫さんはカリカリを皿に山盛りにして食べている。
バッタのすり身がカリカリの上に載っていて、見た目がキモい。
「猫さん、聞いてます?」
「にゃー(素材が奏でるハーモニー! 今まさに奇跡は起きた!
グレイトホッパーのすり身が合わさる事で、さらにおいしさアップだ!)」
先日の騒動について、詳細は未だ調査中とのこと。
今朝、猫のお巡りさんが知らせに来てくれた。
『都市の治安については、都市の奴らの仕事だ。俺が口を挟むまでもない。
それより、このカリカリについて話し合った方が有意義というものだ』とエメラルド板に刻まれた。
駄目だ、この猫さん。
まったくやる気を感じられない。
私達が危険に曝されているんだよ?
死んじゃってもいいの?
はぁ……仕方ない、スペンサー君に調査を任せるとしよう。
雑貨屋クローバーがどこから恨まれているか、まずはその辺を探ってもらおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます