308.【後日談】カンの良いナンシーさん


ナンシーさん達が宿屋に着くと、マック君が迎え入れた。



「ナンシーさん、お久しぶりです!」


「あら? ニコさんかしら?

あなたも魔王に連れてこられたの?」


「えっと、ボクの名前忘れました?

やだなぁ、ナンシーさん。ボケるには早いですよ。

はい。ボクもナンシーさんと同じように連れてこられました。

ネルちゃん、ヨツバちゃんも居ますよ」



ナンシーさんは、んー? と呟く。



「変ねぇ。ニコさんは1年前に、スライムに体を乗っ取られて死んだはずなのだけど。

過去から連れてこられたとしたら、ニコさんは死ぬ前に行方不明になっているはずよね?

そういえば、そちらの男の人は、ニコさんの旦那さんね?

あなたも一緒に亡くなったと聞いていた気がするのだけど」


「……」



おっと!

そこに気づかないで欲しかったぞ!

魔王が誘拐してきたっていうのが嘘とバレるからな!


ま、正直、ネルとヨツバの年齢が逆転しているので、整合性も何もあったものではないのだが。


マック君が、どういうこと? と俺の方を見てくる。

死因について具体的に触れていなかったな、そういえば。

またの機会に話してやるか。



「わーい! ママが帰ってきたー!」



ネルが管理人室から出てきて、ナンシーさんに飛びつく。



「ネル。元気そうね、良かったわ。

ヨツバはどこかしら?」


「えっとね。ダンジョンで修行中らしいよー」


「あの子ったら! また勝手に危ないことして!

急いで冒険者ギルドに探索願いを出さなきゃ!」



ナンシーさんは宿から慌てて出たはいいものの、冒険者ギルドなんてもの、この都市には無い。


引き返してきて、ネルを抱きかかえる。



「ネル! あなた私よりもこの場所に詳しそうね!

依頼をする場合、どこに頼めばいいのかしら!」


「えーと、猫のおまわりさんに頼めばいいんじゃないかなぁ。

あっちにある建物だよ。でもヨツバはね」



ネルが言い終わる前に、ナンシーさんはネルを連れて走り去ってしまった。


そして取り残されるマック君、シャム、パーシー君、シャムの両親。



「ニコ、ここはどこだ?

俺達は何故ここに連れてこられたんだ?」



パーシー君は昔、マック君相手にはニコさん呼びで、丁寧語で喋っていたのだが、結婚後1年で普通に敬語なしで喋るようになった。

マック君が、よそよそしいのでやめるように言ったそうな。

なお、結婚後パーシー君はマック君の尻に敷かれている模様。



「ボクの本名はマクドーンだ。今後マックと呼ぶように」


「お、おう。で、マック……」


「マックさん、私達はいったいどうなるのですか?!」


「いきなり連れてこられて、未来の元フランベル国だ、と言われてもねぇ」


「そうなのか?! ここは未来のフランベル国だというのか?!」


「パパ、魔王の話聞いてなかったのぉ?」



マック君がヤレヤレと首を振り、先ほど俺が説明したことを、もう一度ゆっくりと説明し直すことにした。

何だかすまんな。

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