306.【後日談】ナンシーさん達の復活


さて、3日経ったことだし、命君のダンジョンに行って、ナンシーさん達を蘇生するとしよう。


俺とシルフ婆さん、そしてヨツバとスペンサー君、オリバー君だけでダンジョンの10階層に向かった。



本来ならダンジョンの特定の階層には直接行くことは出来ないらしい。

だが俺は、ダンジョンの女神様や命君からお気に入り登録されているらしく、連れを含め好き勝手に出入り出来るみたいだ。


で、加速度を操って、俺達はダンジョンに到着した。



「では猫さん。私達はダンジョンの施設で修行してきますので、後日迎えに来てください」



ヨツバ、スペンサー君、オリバー君は、ダンジョンにある施設、意識フルダイブ型戦闘シミュレーター大部屋で修行するそうだ。

その間のヨツバ達の魂の損傷治療については、命君のダンジョンに居る機械のハーディス様もどきに任せることにした。


俺とシルフ婆さんは、蘇生前の打ち合わせをする。



「ナンシー達とやらの蘇生と同時にバステト様が眠らせる。

そして魔獣都市に連れて行き、起こす。

その後はワシの出番、というわけじゃな」


『悪役を任せてしまうことになるが、済まないな』と刻む。



俺は自分の正体をばらして正直に蘇生させたことを言うつもりだったのだが、シルフ婆さん達に止められた。

俺が蘇生が行えることを、一般人に知られるのは良くないのだとか。


ナンシーさん達にばらすことで、確実に噂となり、それが広まるとのことだ。

あの人を蘇らせてほしい、という願いを際限なく言われるだろう。

国中、あるいは他の国の大勢から、確実に。


そうなってしまっては、穏やかな生活を送ることはできなくなる。


ということで、俺は極力無関係なフリをする。

その代わり、矛先ほこさきがシルフ婆さんに向くようにする。


シルフ婆さんが、魔王の力でナンシーさん達を魔獣の国に連れて行ったことにするのだ。

蘇生した者には死亡時の記憶が無いので、誘拐されたような錯覚に陥るはず。

それを利用し、誤魔化す算段だ。



『最悪シルフ婆さんが襲われるかもしれない』と刻む。


「かっかっか! なに、人に命を狙われるのは慣れておるわ!」


『本当なら、こんな危ない悪役を任せたくないんだがな。

他に方法を思いつかない』と刻む。



――――――――――――――――――――――――

あのー、よろしいでしょうか?

――――――――――――――――――――――――


「にゃー(人工音声さん、どうした?)」


――――――――――――――――――――――――

トミタが所持する首輪PCで、疑似的な魔王の映像と声を作り出し、再生するというのはどうですか?

――――――――――――――――――――――――


「にゃー(???)」



ダンジョンマスターの命君が所持する声、人工音声さんの提案を聞いてみることにした。

結果、今回の計画は俺1人で十分だと分かった。


なので、シルフ婆さんもダンジョンの施設で修行することにしたようだ。

あの施設、今まで戦った奴らと戦えるから、例えばワルサー皇帝20人と戦うとかも出来る。

本来の20分の1程度の経験値しか得られないとはいえ、すさまじい効率でレベル上げやスキル修得が出来る。


俺もナンシーさん達の生活が落ち着いたら、週に1日くらい修行することにしよう。



◇ ◇ ◇ ◇



・ナンシー視点


最近たまに、胸がギュッと締め付けられるような感覚がある。

お母さまが似たようなことを言っていた後日、ふらっと倒れてそのまま亡くなったわねぇ。

私もそんな病気で死ぬのかしら。


なんて思っていたら、目の前が真っ暗になって眠くなってしまったわ。

ああ私も、死ぬのね。



「にゃー(蘇生完了。寿命無限化完了。

これで異型いけい狭心症で死ぬことは無いはずだ。

周りを暗幕で囲って、眠らせたぞ)」



猫さんの声が聞こえたような気が……意識が遠のく。

さようならネル、ヨツバ。

あなた達なら、私が居なくても立派に生きていけるわ。


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