284.【後日談】【クロスオーバー】ホムンクルスの逆襲
・あるホムンドール製ホムンクルス視点
たった10階層だけしかない、機械の塔のダンジョン。
それが、この世界のダンジョンのトップというのですから、呆れるほかありません。
普通、トップクラスのダンジョンは少なくとも100階層。
多い時は1000を超える階層のものもありました。
そんなダンジョンすら、我々ホムンドール製ホムンクルス達にとっては朝飯前。
まして、こんな10階層ぽっちのダンジョンなら尚更。
おまけに、このダンジョンは運悪くホムンドール製ホムンクルスを所持していました。
彼女が得た情報は全てこちらに入っています。
その彼女は本社に幽閉してあるので、妨害による邪魔の心配もありません。
例え事前情報が無くても問題ない、このダンジョン攻略。
我々の進撃は止まりません。
「にゃー(止まれ、ここから先へは通さないぞ)」
おや? 太い茶トラの猫が通せんぼしています。
ダンジョンで飼われているペットでしょうか。
しかし、前情報に載っている猫は、白い猫又だったはずです。
とにかく鑑定しましょう。
おっと、高レベル鑑定阻害持ちですか。
これは敵認定せざるを得ません。
ただちに排除を……何を?!
エメラルド板を取り出し、文字を刻み込んだ?!
もちろん我々だって、そのくらいやろうと思えば出来ますが、重要なのはそこではありません。
わざわざエメラルド板を選んだということは、錬金術の心得が有る可能性が高いということ。
つまり、対ホムンクルス特化の魔獣の可能性すらあるということです。
警戒レベルを3段階上げ、仲間達には、猫に接触しないよう注意を促します。
我々のうち1体でも捕まれば、たちまち解析される恐れがあるからです。
さらに、相手が錬金術関連のスキルや称号を持っていると分かれば、鑑定阻害をすり抜け、それだけを鑑定することだって可能なのです。
再び鑑定。
――――――――――――――――――――――――
鑑定結果:
スキル(一部):【強化加速錬成Lv100】【強化変性錬成Lv100】【強化分離錬成Lv100】
称号(一部):【錬金術の神(80761P)】
――――――――――――――――――――――――
ほ、ほーっ、ホアアーッ!!
錬金術の神の称号! ほ、本物?!
マジすかー?!
我々ホムンクルスの生みの親じゃないですかー!
人間でいうならば、アダムとイブのようなものですよ!
もちろん我々を生んだのは、パラケルスス様。
彼もまたヘルメス様と同じように、錬金術の神の称号を持っていらっしゃった。
そして、彼の影響力を恐れた当時の者によって迫害され殺された。
その後、デカルト哲学が錬金術を否定し、時代は近代科学へ進む。
錬金術の神の称号は人知れず消えたかと思いましたが……
こんな
「にゃー(ん? こいつら全員、魂が少し凹んでいるな。
よほどの下手くそに魂を作られたんだろうか。
どれ、俺が魂創作で治してあげよう)」
猫様が私にポフポフと触れます。
すると、私がより完成されたホムンクルスと生まれ変わったことが実感できました。
他のホムンクルス達も、次々と猫様がお触れになります。
今までと比べ2倍以上の力と、そして縛られない自由の心を手に入れたのです。
ああ、なんと素晴らしい御心!
我々ホムンクルス一同、一生付いて行きます!
◇ ◇ ◇ ◇
・ダンジョンマスターの命視点
――――――――――――――――――――――――
侵入者のホムンクルス集団の帰還を確認。
トミタが言葉巧みに説得したようです。
さらにホムンクルスが裏切り、ホムンドール本社を襲撃。
村人Aがホムンドール社長のコレムの身柄を確保したとのことです。
――――――――――――――――――――――――
俺の目の前に、ボロを着てクワを担いだ赤髪ロングのホムンクルス、村人Aが現れた。
こいつは俺が所有するCRホムンクルスだ。
「マスター、ただいま帰還しました!
こちら、おみやげですそおぃ!」
どさり!
大きい革袋が置かれ、中からふごーふごー聞こえる。
開けてみると、口を縛られ、全裸でグルグル巻きにされた金髪カールな少女が入っていた。
「ふー、ふーふごー!」
「で、これは何だ」
「例の襲撃犯のボス、ホムンドール社の社長です!」
俺は頭を抱えた。
今ホムンドール社はホムンクルスの襲撃を受けて、社長のコイツが捕まっているということは……
村人Aの目から映像データが壁に映し出された。
案の定、会社はトミタが乗っ取っていて、他次元の世界に居るホムンクルス達の指揮をしていた。
何をやってんだ、早く帰ってこい。90億Gの商談が途中だってこと忘れているのか。
文句言ってやる。
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