280.【後日談】【クロスオーバー】にゃんこ屈する


10畳ほどの部屋だ。

そこに集まった男達が騒ぎ出す。



「侵入者?! しかもこの猫、鑑定阻害を持っているぞ?!」


「何者だ?!」


「頭(かしら)、今すぐソイツを手放した方が良い!」



頭と呼ばれたダンジョンマスターと思しき女性が、じっと俺を見る。

俺もじっと見返す。



「おい毛玉、テメーただの猫じゃねーな。

普通の猫なら、じっと見られたら眼をそらすぜ」


「にゃー(俺はトミタ・ミナモトだ。あんたは五島亜理子だな?)」



鑑定っと。


――――――――――――――――――――――――

鑑定結果

名前:五島亜理子|(ごとうありす)

Lv:14(22歳)

種族:人間

所属:ダンジョン『キャプテン・アリス』

スキル:なし

ステータス:

HP 0/0(不死) MP101/101

ATK57 DEF46 MAT0 MDF20 SPD32 INT56 LUK15

称号:【ダンジョンマスター(階位32位)(25,280,757,528DP)】

【船長】【略奪者】


女神ホーラによって転生した、地球出身の人間。

好戦的な性格で、自分のダンジョンをわざわざ戦場へと向かわせるほど。

海賊コスプレと可愛い物が好き。

――――――――――――――――――――――――



「なるほどな、テメーが錬金術の神トミタってやつかよ」



もふもふ。

亜理子が俺を膝に乗せて顎をなでる。



「にゃー(迷惑メールを仕掛けたお前に、説教しに来た……って止めろ―!)」


「ここか? ここが良いのか? ほれほれ」



亜理子が的確にモフってくる。


うおー! くすぐったい!

くそっ、こんな所で屈するわけには……



◇ ◇ ◇ ◇



「ゴロゴロゴロゴロ……」


「すげぇ、神様を手なずけやがった!」


「さすが俺達の頭だ!」



モフモフには勝てなかったよ。


というか人肌恋しさに拒否できなかっただけなのだが。



「マスター、ところでそこの神と戦うという話は」


「あぁ? 猫相手に喧嘩する奴があるかよ。

見ろ! この肉球を!」


「にゃー(やーん)」


「は、はぁ」



この後もさんざんモフられた。

それから海賊船を抱っこされながら案内された。


客室のベッドで一緒に昼寝して、のんびり過ごす。

やがて日が落ちてきた。



「にゃー(そろそろ帰るか)」


「ひゃはは! そうか!

またいつでも遊びに来な!」



◇ ◇ ◇ ◇



ダンジョンマスターの命君のダンジョンに戻って来た。

エレベーターで10階層に昇る。


機械のティラノレックスが出迎えてくれた。



「キャキャキャー!(お、トミタはん。どこに行ってたんや?)」


「にゃー(ちょっと五島亜理子に会いに)」


「キィィイイイエエエエエエエ!(何しに?)」



……あ。

説教するのを忘れてた。


しかし、その後は五島亜理子による迷惑メールはパタリと止んだのだった。

理由は分からないが、まあいいや。



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