276.【後日談】【クロスオーバー】ギャンブルとして成り立たない。カジノ運営が潰れるぞ


ダンジョンマスターとは、ダンジョンを管理する転生者達を指すらしい。


バイト内容は、ダンジョンマスター達の面倒を7日間だけ俺がみるというもの。

主に苦情や要望対応をすれば良いらしい。



「ダンジョンを管理する魔道具の世話はしなくてもいいようにしているんだな。

ダンジョンバトルの監視については、階位20位以内同士以外なら、放っておいてもいいんだな」


「にゃー(このマニュアルに沿って対応すればいいのか。

マニュアルに乗っていない事案は?

自己裁量で良いのか?)」


「それでOKですわ~」


「バイト代は、旅行先で買ったおみやげでいいんだなー?」


「にゃー(ああ)」



お金を貰ったところで、今の俺に使い道はほとんど無い。

このバイトだって、暇つぶしに受けてやるくらいに思っている。



「交渉成立ですわ~」


「うっかりダンジョンが滅びそうな時は、このメアドに緊急連絡よろー」


「じゃ、早速行ってくるんだな」



俺は女神ニセルから、バイト先の世界の座標と、ニセル宛てのメールアドレスが書かれた紙を渡される。

……どうやってメールを送れと?


紙から顔を上げ質問しようとしたら、既に3人は消えていた。


まあいいか。

現地のダンジョンマスター君に聞いてみることにしよう。



◇ ◇ ◇ ◇



【強化加速度操作Lv100】を使用する。


自分に対して、時間軸方向に加速度をかけてやれば、好きな時代、世界に自分を送りこむことが出来る。

ただし、過去を改変することは出来ない。

過去で何をやっても、並行世界を1つ増やすだけで、未来を変えることは出来ない。

そして、並行世界はやがて1つに収束する。


100年間、過去に何度も飛んで実験した結果分かったことだ。

過去を変えたら、その時点で世界が分岐する。

分岐した先の世界には、分岐した世界の俺が居た。

そこに俺の居場所は無かった。


おっと、回想している場合じゃない。

指定された世界に飛ぶことにしよう。


俺は適度にスキルを使用し、バイト先へ飛んだ。



◇ ◇ ◇ ◇



・とあるダンジョンマスター視点


配下の機械魔獣達とともに、ルーレットテーブルを囲む。


ルーレットとは。

回転盤(ホイール)を回転させ、そこにボールを逆方向に転がすように投入。

そしてボールがどこに入るかを当てるゲームだ。

カジノの女王とも呼ばれ、多くのギャンブラーはその虜となった。


数字を当てるのは、別にピンポイントで当てなくても良い。

数字はグループや赤黒で分けられているので、それを当てるのも有りなのだ。

1~2つの数字に賭けて一攫千金を狙うも良し、列やグループに賭けてコツコツ遊ぶも良し。


賭けるチップは、ディーラーが賭け追加終わり(No more bet!)の声を上げる前に置くことになっている。

俺は17番にチップを置いた。俺の配下も全員同じ場所に置く。



「おいお前ら、俺の真似するな」


「キエェェェェエエエエエエエ!(せやかて主、そこに止まるのが分かってるんやて)」


「ギャッギャ!(我々機械魔獣相手にルーレットしても、100発100中ですよ)」


「にゃ!(ノーモアベットだよ!)」



白い大食い猫又、ミルフィーユの掛け声。

だんだんとボールのスピードが落ちてきた。

果たして、17番にボールはドロップし、俺達全員勝った。


……。


つまらん。



「実物のルーレットは中止な。

次はコンピュータのルーレットにするぞ」


「ギャギャ(えー、コンピュータのルーレットは不自然な動きするから、演算が効かないじゃないですか)」


「だが、これだとギャンブルにならんだろ。

100%近くの確率で予測可能だとすると、ディーラーが大損するだけでギャンブルとして成り立たない。

カジノ運営が潰れるぞ」


「ギャッ……ギャーギャ!(むぅ……仕方ないですね!)」


「にゃー(おっ、着いた着いた)」


「おいミルフィーユ、せっかく作ってくれたこのルーレットだが仕舞ってく……誰だ?」



俺の目の前には、見かけないデブの茶トラ猫が居た。

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