228.ナンシー、仲裁する


3日後の雑貨屋クローバー応接室にて。


シャムと彼女の両親が話し合うことになった。

仲裁はナンシーさんだ。


本当は俺が仲裁をしたかったのだが、スペンサー君いわく、関係のない第三者の方が望ましいとのこと。

なので、リオン君に頼んで連れて来てもらった。

タダでは悪いので、仲裁料10万Gほど払って。


ちなみにヨツバはネルが宿にて面倒を見ている。



「はーい、じゃあ双方の言い分を聞きましょうか。

まずはご両親からね」



両親の話は、子どもが1人しか居なく、パン屋の跡継ぎがシャムしか居ないこと。

王宮のコック見習いについても、娘がどうしてもというから仕方なく認めてやったとのこと。

なのに城から解雇されたと聞いて、その後一向に帰ってこない。


ある日近所の知り合いから、シャムが雑貨屋で働いていることを聞きつけ、店へやってきた。

少々言い過ぎたが、何も雑貨屋で働かなくてもパン屋に戻ってくればいい、という意見は変わらず。



「で、次はシャムちゃんね」



凝った料理が好きなシャムは、毎日同じパンばかり出すパン屋の作業にうんざりしていた。

そこで王城のコックならば色んな料理が作れるだろうと、コック見習いを志願。

しかし思うように出世せず、同僚に振られた腹いせに秘蔵の酒を飲んでクビに。


帰るのが気まずいと思っていたところ、雑貨屋に拾われ、住みこみで働くことになった。

雑貨屋の人達には世話になっていて、まだ恩を返しきれていないので、しばらくは雑貨屋で働きたい。



「うーん、なるほどね。

雑貨屋の他の店員さんがここに居らっしゃらないから、彼らの意見が分からないところだけど」


「にゃー(ここに居るぞ)」



俺はテーブルに乗り、自己アピールする。


ひょい、とナンシーさんが俺を抱っこする。



「猫さんは邪魔だから、外で待っていてね」



部屋の外へ連れ出され、パタンと扉を閉められた。

俺、店長なんだけど。


まあいい、ナンシーさんが上手く仲裁してくれることを信じて、俺は昼寝するとしよう。

おやすみなさい。



◇ ◇ ◇ ◇



昼寝から覚めたら、既にシャムの両親は帰っていた。

リオン君に、仲裁の結果どうなったか聞く。



「ああ、シャムさんは少なくとも1年は、ここで働きたいんだってさ。

両親は、パン屋の後継者になりたい人を募集することにしたそうだ」



なるほど、シャムはここを選んだのか。



「旦那はこれで良かったのか?」



良いも悪いも、正解なんてないだろう。

本人達が納得したのなら、それでいいと思うがな。

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