7章

227.ふて寝


この世界に来て6年、か。

時間が流れるのは早いものだ。


俺は猫の集会所の箱の中に入っている。

他の猫も4匹ほど入っているから、ギュウギュウだ。



「ぶみゅー(この狭さ、たまんねぇ)」


「にゃー(ミッチミチだな)」


「みゃお(落ち着く~)」



箱の中でのんびり過ごしていると、リオン君が俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

なので箱から出る。


声の方向に歩いていると、彼を見つけた。



「旦那! 大変だ!」



大慌てで俺に駆け寄るリオン君。

一体どうしたと言うのか。



「シャムさんと、彼女の両親が喧嘩している!」



あー……シャムは家出中だったなぁ。

両親はさぞ心配だったのだろう。

というか、連絡を怠った俺のミスだよな。


仕方ない、仲裁に行きますか。


俺はリオン君と一緒に、店へ向かった。



◇ ◇ ◇ ◇



「先ほどから聞いていれば、何だその態度は!」


「何よぉ」


「シャム、いい加減家に戻ってきなさい」


「嫌よぉ。私ここで働くのよぉ」


「親の言うことが聞けないというのか!

このろくでなしの親不孝者め!

だいたい、こんな怪しい店で働くなぞ……」



店の中で、シャムの両親とシャムが言い合っていた。

客が遠巻きに見ている。

軽く営業妨害なのだが。


よーし、ここは俺のプリチーな姿で、場を和ませてやるぜ。



「にゃー」


「何だこの目ざわりなデブ猫は!」


「今大事な話をしているの、シッシッ」



猫にメロメロ作戦は駄目だった。ショックだ。

こうなったらふて寝してやる。


俺は箱を取り出し、中に入ることにした。

おやすみなさい。



「旦那ー?!」



しばらく昼寝した後もまだ言い争っていたので、オリバー君に頼んで、両親を店から締め出してもらった。

話し合うにしても、お互いもう少し頭を冷やした方が良い。


俺はタイプライターで、シャムは責任を持って預かっていることを記し、後日話し合いに来るように書いた。

その手紙を夜こっそりとシャム家のパン屋へと届けた。

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