223.元治癒大臣
雑貨屋クローバーにて。
今日は生薬販売日だ。
朝から昼前までの間、コーディと共に販売する。
ちなみに、西洋薬の販売はリオン君に一任している。
コーディは人の群れが苦手なので、彼女のために
間仕切りの向こうから話すことにしている。
お、お客さんか。
「そこの張り紙に書いてあった、生薬とやらが欲しいのですが」
俺は、質問を書いた紙を咥えて渡した。
「ええと? 読めません」
この世界は識字率が低いのだろうか。
「……貸して」
間仕切りの向こうから手が伸びてきた。
お客さんは質問の紙を渡す。
「……質問1、何を治したい?」
「子どもが風邪をひきましてね、なかなか治らないのですよ」
「どのくらい経つ?」
「かれこれ3ヶ月ほど、ずっとゴホゴホ言っていますね。
医者に診せましたし、薬も飲ませたのですが効果が無くて」
「飲ませた薬は持ってきている?」
「いえ。ですが、この雑貨屋で購入した薬だと医者が言っていました」
ふむ、ならば抗生物質は既に使ったってことか。
だとすると、抗生物質が効かない細菌か、ウイルスか、真菌か。
それともアレルギーか。
「咳で
「透明です」
非細菌性か?
ウイルス性にしては長く治っていない気がするが。
「……アレルギーに効く生薬。これで様子見。
咳がマシになる物も入っている」
「ありがとうございます!」
さすが元治癒大臣。
俺のアドバイス無しでも病気の見当をつけたのか。
「……薬が効いても効かなくても、また来て」
その後もコーディが客を何人も捌く。
彼女が頼もしいせいで、俺の仕事が無い。
コーディは、先ほどのデータと、客達へ渡した薬をタイプライターでメモしていた。
この世界にはカルテが無い。
何せ、この間まで紙が貴重品だったから。
データをたくさん残しておけば、今後役に立つこともあるだろう。
患者治療や俺達の研究のみならず、未来の誰かにとっても参考になる資料のはずだ。
コーディの作業を眺めつつ窓際で日向ぼっこしていたら、俺はいつの間にか昼寝していた。
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