219.乾杯


倉庫建設から1ヶ月。

ここは雑貨屋クローバーの喫茶スペース。


丸机が3つ並んでいる場所に、所狭しと料理とお菓子が並べられている。

リオン君、ネル、ヨツバ、オリバー君、チャールズ君、スペンサー君、シャムといった雑貨屋の関係者達が机を囲む。

いや、ネルは関係者とは違うか。ヨツバを連れ出すために来ただけだな。


コーディが居ない?

あいつがこんな人口密度高い所に来たら吐く。

だから応接室に待機させている。

後で料理を運んでやろう。



「旦那、もういいんじゃね?」



俺は頷く。



「皆飲み物は持ったな?

よし、雑貨屋クローバーの改築を祝って、せーの」


「「「カンパーイ!」」」



皆は、人面オレンジジュース、デザートアプル酒をゴクゴクと飲む。

俺? 水ですが何か。


ちなみに乾杯の音頭は過去の勇者が広めたそうだ。

これを行うと神の祝福が得られ、縁起が良いとか言われている。


昨日その話を聞いた俺とヨツバは苦笑い。

言うまでも無く乾杯にそんな効果は無い。

過去の勇者の口から出まかせである。


ま、皆の気持ちが一つにまとまるってのは良い事だ。



「わ~、このオムレツ、とってもおいしいです~」


「ふむ、悪くないのぅ」



店と関係ないエルフと老婆が居るが、気にしない。



「キュオオオオン!(この肉の焼き加減! 絶妙である!)」


「にゃー(おい、肉は一人一つまでだぞ)」



キラーボアの照り焼きをおかわりしようとしたフランベルジュを止める。



「おいしいね、ヨツバ!」


「ですね」


「酒のおかわりだッ!」


「吾輩も頼む」


「わかりましたぁ~」



さて、そろそろコーディの分の料理を取り分けて、運ぶとしよう。


念動力で、皿に料理を盛る。

四次元空間に収納し、そのまま四次元ワープ。



◇ ◇ ◇ ◇



「……もう始まっていた?」



ここは応接室。

机に料理を乗せるとコーディが聞いてきたので頷く。



「優れた防音設計……騒ぎ声……ほとんど聞こえない」



それだけチャールズ君達の腕が良いということなのだろう。

ありがたいことだ。


っと、コーディが料理に手を付ける前にやらねばならないことがある。



「?」



俺は水を満たした自分のコップを取り出し、コーディに突き出す。



「……ああ」



コーディが、ジュース入りのコップを突き出す。



「乾杯」


「にゃー(乾杯)」



木製コップなので、コン、という軽い音が鳴った。

ガラスのコップを作っておけばよかったなぁ。


ま、いっか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る