206.合格!


「ふむ、大魔導士殿、こちらとしては助かるが、良いのだろうか?」


「にゃー(大丈夫だ、問題ない)」



王様の問いに対し、俺は頷く。


ここは王城地下の牢獄。


帝国ルカタで捕まえた要人20人が閉じ込められている。

全員、奴隷の首輪を付けられている。


その中から、店の手伝いに良さそうな人物を見繕うことにしたのだ。



「では、決まったら知らせるのだ。

私は仕事があるのでな」



王様は牢獄からさっさと出て行った。



「大魔導士殿、順番に紹介していきますので、付いて来てください。

まずは元近衛兵のフォルック。

体格がガッシリしているので、力仕事に向いているでしょう」



檻の向こうの人物が俺を見るやいなや、顔を真っ赤にした。



「この……大悪魔! ルカタ皇帝と1万の兵を殺した殺人鬼め!」



どうやらルカタ帝国から見ると、兵1万を俺が始末したことになっているらしい。

風評被害なのだが、言ってもどうせ聞いてもらえないだろう。

彼は俺に敵意を持っているので、採用は無理か。


俺は『次』と書いた看板を挙げる。



◇ ◇ ◇ ◇



「次は、元治癒大臣、兼、薬研究者のコーディです。

……正直、この者はよく分かりません」


「……魔王?」



目にクマが出来た、ボッサボサの蒼い髪の女性だ。


俺はあらかじめ用意した質問表を見せる。

内容はこうだ。


1.俺を恨んでいるか?

2.得意なことは?

3.苦手なことは?

4.将来の夢は?


それを眺めて、彼女は俺に一言。



「……職員の採用?」


「質問を質問で返すなあーっ!!」



兵士君がうるさいので『黙れ』と板に書く。

彼はしょんぼりして端で小さくなった。



「……回答1、恨みなし。この処遇は極めて妥当、むしろ甘い。

回答2、薬品や治癒魔法の研究。回答3、大勢の人の前は駄目……気分最悪。

回答4、部屋で閉じこもってずーっと研究漬け」


『合格!』の板を挙げる。


「???」


タイプライターを取り出し『新設予定の研究室で働いてもらうぞ』と打つ。


「……承知」



研究員確保!

あとは図書館管理の人、店の店員、倉庫番の少なくとも3人が必要だ。

さて、どうするかな。

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