6章
201.ニコのバカー
本日は青天、昼寝日和の良い気候だ。
宿屋の管理人室でのんびり昼寝していると、聞きなれた懐かしい声がした。
起きて、あくびして入口へと向かう。
「猫さん、久しぶり!」
メガネをかけた銀髪ショートヘアの錬金術師、マック君だ。
美少年に見えるけど、一応女の子だ。
最近は偽名のニコが定着しているのだが、俺としてはマック君の方が呼びなれている。
「あらニコさん、どうなさいました?」
「ナンシーさん、実は夫の祖母と揉めて、家出中でして」
「まぁ」
聞けば、マック君とパーシー君の祖母が喧嘩中らしい。
祖母のテレサさんいわく、家事炊飯が出来ないマック君は女性失格だと。
また、毎日研究で夜遅くまで城に居るのは自分勝手だ、と。
そんなので子どもを育てられるのか、と。
「酷いと思わないかい、猫さん。
ボクは何も悪いことしてないのに」
「にゃー(うーん)」
現代の価値観では、そういう女性も普通に居ても何ら不思議ではないし問題もない。
社会がそれを認めているからだ。
だが、この世界はどうだろう。
マック君みたいなのは少数派で、あまり市民権を得ていないのではなかろうか。
「ニコさんったら、猫さんに聞いたところで答えられるわけないですよ」
「え? 普通に受け答えしますよ?」
「またまたー」
ナンシーさんは笑って買い物に出かけて行った。
ヨツバがギロリとマック君を睨む。
「ニコは馬鹿ですか。猫さんが喋れることは秘密に決まっています。
もし猫さんが魔獣と思われて警戒されたり、宿を出禁にされたらどうするのですか?」
「そーだよ、ニコのバカー」
ネルが便乗してマック君を罵倒する。
俺は別に喋れるわけではないぞ。
意志疎通に書いたり打ったりするくらいだし。
「二人ともボクに容赦ないね……」
ネルはマック君に空き部屋の鍵を渡した。
今日は宿に泊まることになったらしい。
パーシー君が寂しがらなければいいが。
俺はまだ寝足りないので、昼寝させてもらうとしよう。
「ところで猫さん!
これはボクの最近の研究成果をまとめた論文なのだけど、よかったら読んで意見を聞かせて欲しい!」
ええー……俺は今から昼寝するつもりだったのだが。
論文を読み、考察や手順の甘い箇所に印を付ける。
マック君はタイプライターで論文の書きなおしを開始した。
さすがに手順は既に行った研究なので直せないから、他の箇所の修正だろう。
俺はタイプのガチャガチャ音をBGMに、昼寝を続行することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます