170.パンデミックの終息


隔離施設へは、フランベル国のあらゆる人が訪れた。

俺の噂は、1ヶ月足らずで国中へ、そして2ヶ月足らずで世界中へ広まったらしい。


症状がある人以外は、抗体を与え、【森の主】の命令をした後に帰ってもらった。


後から分かったことだが、どうやらフランベル国以外の者も、俺の元を訪れて治療してもらったらしい。

隣国の宰相がこっそりやってきた時は、兵士が驚いていた。


時には魔獣国と呼ばれる国の魔獣が森へ侵入し、俺に会いに来た。

治療し、抗体を与えようとしたが、よく考えたらヒト抗体を与えたら駄目だろうと思い直す。

仕方なく【ヒール】で魔獣用の抗体を作らせ【鑑定】。

鑑定結果の抗体を猫タッチで与え、彼らには帰ってもらった。


人の中には俺を誘拐しようとした輩も居たが、錬金術で巨大怪獣人形を作ると叫んで逃げて行った。


世界中で未だに感染は続いているが、かなり収まった。

俺が治した後、どうやって治したのか聞いてきた【ヒール】使い達が、各地で頑張っているらしい。


約1年。色々あったなぁ。

この施設も結構痛んできた。

毎日これだけたくさん使えば当然か。


俺は隔離施設の前に立つ。

今日は、隔離施設の取り壊しの日だ。


といっても、式典も何も無い。

俺が錬金術で素材へと分解するだけだ。


兵士に、隔離施設内に残っている者が無いか確認させ、大丈夫そうなので変性錬成。

建て物は、人工大理石の塊になった。

塊は、俺の四次元空間内に眠ってもらうことにした。



◇ ◇ ◇ ◇



ここは王城の王の間。

今日、俺は王様に対して、感染症への対処に最も貢献した者として、褒美を要求することになっている。


噂を聞きつけた貴族達が駆けつけ、金銀財宝が俺へと送られたが、ぶっちゃけ興味ない。

後でアウレネやヨツバにでも押し付けるとしよう。



「では大魔導士殿、褒美は何を求む?」


「にゃー(要求する褒美のリストだ)」



王様へ、要求する物や内容を連ねたリストを渡す。

ちなみにリストはヨツバと相談して決めた。

相談の時、『俺は特に何もいらないのだが』と書くと、ヨツバは「馬鹿ですか」と呆れて、「国王に舐められないように労働


対価はきちんと請求してください」と言ってきたのだった。



「何々?

大魔導士へ現金8000億G贈与、

雑貨屋クローバーの税金および販売制限を未来永劫みらいえいごう全免除、

クローバー及び周辺の土地10軒分の贈与、

パーシーはじめ感染症対策に関わった兵士達にボーナス1億G贈与、

上質な木箱30個にそれから……」


「「「……」」」



王様がリストの朗読を終わり、周りが静まりかえる。



「ふざけるな! 国の財政を壊す気か?!」



防衛大臣が怒鳴る。

そうだ、そうだ、と兵士たちも言っている。



「大魔導士殿、いささか要求過多ではないか?」



王様が言うが、俺としては安く見積もったつもりなのだが。

ちなみにモノクローナル抗体薬1種類を使った治療は、現代日本で1人あたり1ヶ月数百万円する。

俺は数種類の抗結核抗体を1年間、数えきれない人に与えたのになぁ。



「ほっほっほ。

いやはや、大魔導士殿がどれだけの偉業をなさったのか、ここの連中はまるで理解しておらぬようだ」



白いヒゲを顔中にたくさん生やした、背の低い老人が笑う。

誰? 見かけない顔だな。



「初めまして、大魔導士殿。

私は隣国クレイの王、クレイ11世と申す」

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