157.オリバー君を雇う


朝の森にて。

ただ今、雇用の交渉中。



「条件は1日10万G。

俺は護衛のみで、店の運営には一切関与しないッ。

どうだッ?」



エルフのオリバー君が言う。



『よし採用。

ちなみに憲兵さんの給料は1日1万Gくらいだ。

10人分の護衛してもらうからな?』と書く。


「……悪かったッ! 1日1万Gで良いのだッ」



交渉成立。

とりあえず一ヶ月分の30万G渡した。



◇ ◇ ◇ ◇



さっそく町にオリバー君を連れてきて、一緒に店に入る。



「旦那、いらっしゃい……誰だそいつ?」


『今日から護衛を雇うことになった、エルフのオリバー君だ』と書く。


「よろしくな少年ッ!」



オリバー君はしゅたっ、と右手を挙げる。



「ああ。なら、店員増員の書類を役場に書きに行くから、店番頼む」


「俺は護衛以外の仕事はしないッ!」


「それじゃ、あんたが書類書きに行ってくれよ」


「俺は護衛以外の仕事はしないッ!」


「じゃあ、どうしろってんだよ?!」



面倒臭い性格だなオリバー君。



「にゃー(もしもし、そこのお二人さん)」


「ん? 旦那? え、旦那が店番?

そうか、じゃあ俺が手続きに行ってくる」


「よし、俺は少年の護衛に行ってくるぞッ」


「結局ついてくるのかよ?! だったらアンタが手続きに行けよ?!」


「だが断るッ!」


「めんどくせーなアンタ?!」



というわけで、店番をすることになった。

店員、と書いた布を頭にバンダナっぽく巻きつける。


そして左手を上げ、招き猫のポーズ。

左手は客を招くらしいな。

ちなみに右手は金運を招く。

両手を上げるのは欲張り過ぎて良くないらしい。


レジの上で、じっとしていた。


……。


…………。


……暇だ。

俺は招き猫のポーズを止める。


早朝の客はリオン君が捌(さば)いたらしく、店内には客は居ない。

昼にはエルフ製シュークリームを淑女の皆さまに販売するのだが、それまですることが無い。


というわけで、錬金術で時間つぶしすることにした。

ガラスの人形でも作って飾るとしよう。


俺は手のひら大にガラスをカットし、錬金術で変形させて遊んでいた。



◇ ◇ ◇ ◇



「旦那、ただいまー……って何だこれ?!」


「おおッ! フランベルジュ、そしてシルフ様のガラス像だとッ?!」



色んなガラス人形を作って地面に並べていたら、リオン君達が帰って来たようだ。

結局お客さん、来なかったなぁ。



「このシルフ様のガラス像を買うぞッ! いくらなのだッ?!」


『どれでも1個100万G』と書く。

店の飾りに置くので、売るつもりはない。

買うのなら勝手にどうぞ、って感じだ。


「くそッ! あと70万Gあればッ!」



何故か欲しがっていたオリバー君に、シルフ婆さん型のガラス人形をプレゼントした。

そのガラス人形は、森の彼の家に大切に飾られることとなる。


そしてこの日作ったガラス人形は、次の日には完売してしまった。

物好きな人も居たものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る