156.強盗


翌日の早朝。

ここは町の広場の1つ、通称猫の集会場。



「みゃー(腹減ったー!)」

「みゃー(遊んでー!)」

「みゃー(眠いよぅ)」



集会所には小さな子猫が3匹居た。

大人の野良猫達が適当に相手している。

子猫可愛い。飼いたい。



「にゃー(いくら猫又様でも、子猫をさらっては駄目ですよ?)」


「にゃー(ん? さらうつもりはないぞ)」


「にゃー(左様ですか。

たまに子猫をさらう人間が居ますが、彼らと同じような表情を、猫又様がなさっていたので)」



そんな顔してたのか。

人さらいならぬ猫さらい、か。

この町、というか多分この世界、ペットショップとか無さそうだからなぁ。

猫が飼いたい場合、分けてもらうか野良猫を捕まえるか、くらいなのだろう。


確かにペットに猫が欲しいが、猫を飼うのに丁度良い家も無い。

そして、そもそも俺自身が猫なせいで相手の言葉が分かるから、どうしても躊躇してしまう。


ま、こうやって野良猫を見守るだけでも別にいいか。


子猫の健康状態を鑑定して異常が無いのを確認し、俺は店に向かった。



◇ ◇ ◇ ◇



雑貨屋クローバーの店の前。

リオン君と、兵士っぽい人が話し合っている。

良く見るとリオン君は切り傷があちこちに出来ている。


その店なのだが、扉は壊され、中はぐちゃぐちゃに荒らされていた。



「で、盗られたのは、引き出しに入れた現金だけなのだな?」


「そうです。金庫は重すぎて、奴らは持っていけなかったようです」


「分かった。ひとまず話は終わりだ。

私は憲兵詰め所に報告に戻る。何かあれば、また来るように」



さっきの人は憲兵か。

ということは、店に泥棒でも入ったか?



「旦那! 済まない、店に賊が入った」


『気にするな』と書く。


「ヨツバ姉さまに言われたように、おとなしく金を差し出したけど、奴ら調子に乗りやがって……」



店で暴れ出した奴らのせいで、ケガしたらしい。

回復魔法で治してやった。


うーむ、小さなリオン君1人では店番は危ないのかもしれない。

誰か雇うか。腕っ節に自信がある奴……。


俺は錬金術で店を元通りにした後、丁度よさげな人材を思いつく。

オリバー君だ。森で暇してた彼を雇うことにしよう。


商品を補充した後、さっそく森に帰ることにした。


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